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計算で多くの人を救いたい

 「エンジニアになったきっかけは、中学生時代の自由研究だった」と横山は振り返る。松の葉に付いた排出ガスの汚れから交通量を調査したことで、エネルギーや環境問題を意識するようになったのだ。京大大学院では田中教授の研究室に所属し、MIの手法で太陽電池材料を研究した。「問題解決の糸口になる太陽電池材料を、(分子レベルで)本質から理解したかった」(横山)からだ。

 パナソニックに入社を決めた理由は、さまざまな分野の研究者と交流できる環境と、若手でも自分の裁量で研究できる自由度に引かれたためという。14年に入社してから2年間はリチウムイオン電池を開発し、16年からは太陽電池の開発を進めている。

 19年には東工大に社会人入学し、同大学の笹川准教授とペロブスカイト型太陽電池の共同研究を進め始めた。MIは主に、分子の組み合わせから物性などを予測する「計算分野」と、実際に性質を確かめる「実験分野」に分かれる。横山はその両方を習得する貴重な人材だ。

 スーパーコンピューターを使って計算することもあるMI分野だが、横山自身は普段ほとんど物を持たないいわば“ミニマリスト”である。「普段持ち歩くのはタブレットくらいで、本などはデジタル化している。会社のPCや、外部のスーパーコンピューターにも遠隔でアクセスできるため、どこでも研究できる」(横山)。実際、新型コロナウイルス感染拡大後は、実験の日以外ほとんど出社しないで仕事ができているという(図4)。

図4 パナソニック製のタブレットを持ち歩き、どこでも研究を進められるようにしている(撮影:日経クロステック)
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図4 パナソニック製のタブレットを持ち歩き、どこでも研究を進められるようにしている(撮影:日経クロステック)

 横山が今後目指すのは、MIでゲームチェンジャーとなるデバイスをつくりだし、エネルギー問題の解決に貢献することだという。「エンジニアは技術を使って、多くの人を救うことができる。材料を本質からデザインできるMIは、エネルギーの枯渇問題に対する1つの解決策になるかもしれない」と横山は意気込む。(敬称略)

ちょっと一息

横山氏の趣味はカメラと旅行だ。国内外を飛び回っては、風景を写真に収めている。例えば、スペイン南部で自転車旅行した経験がある。現地に持ち込んだ自転車を使い、観光地からは離れた場所を走り回った。自転車で旅行したのは、自動車などでは見逃してしまうような景色に出合えるからだ。2018年には中国系メディアの人民網日本が主催する観光写真コンテストに入賞し、中国旅行に当選したという。愛機を聞いてみると、にやりと笑った。「パナソニック製ではないので、ちょっと明かせない」。

スペイン南部で自転車旅行したときの1枚(撮影:横山 智康)
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スペイン南部で自転車旅行したときの1枚(撮影:横山 智康)
最近はフォトコンテストにも入賞するようになってきたという横山氏(撮影:日経クロステック)
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最近はフォトコンテストにも入賞するようになってきたという横山氏(撮影:日経クロステック)
■変更履歴
掲載当初、「笹川教授」とありましたが、正しくは「笹川准教授」です。また、「上司である大内暁」とありましたが、正しくは「先輩社員である大内暁」です。以上おわびして訂正します。本文は訂正済みです。