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 第3次AI(人工知能)ブームをけん引してきたディープラーニング(深層学習)。その先駆者で“ディープラーニングの父”とも称されるのが40年以上も前にディープラーニングの原型といえる「ネオコグニトロン」を考案した福島邦彦氏である。ネオコグニトロンは学習機能を備えた多層の神経回路モデルであり、ディープラーニングの一種で広く利用されている「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」に大きな影響を与えた。

 今もネオコグニトロンの改良を続ける福島氏に、ネオコグニトロンの仕組みや考案したきっかけ、改良点などを聞いた。インタビューには東京大学の松原仁 次世代知能科学研究センター教授が同席。AI研究者の立場から、ネオコグニトロンの意義や日本で同種の研究が広まらなかった理由を解説してもらった。

 後編では福島氏と松原教授の対談を通して、第3次AIブームと汎用AIの可能性をひもとく。


ディープラーニングの先駆けと言えるネオコグニトロンですが、福島先生はディープラーニングが盛んに研究されている今をどのように思われますか。

「ネオコグニトロン」を考案した福島邦彦氏
「ネオコグニトロン」を考案した福島邦彦氏
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福島氏: 学習をもっと簡単にできないかな、と考えています。ことわざで「一を聞いて十を知る」と言いますけれども、今のAIは「億を聞いて万を知る」。だから、今後は「万を聞いて億を知る」あるいは「千を聞いて万を知る」となるように狙うべきだと思います。

松原氏: ディープラーニングは大量のデータが必要です。まともな答えを得るためには、膨大なデータ量とそれを演算するコストがかかりすぎるという問題が出てきています。

 対象となるデータがネットなどから大量に集められる場合はいいのですが、そう都合良く集められないケースや、情報が紙のままでデジタル化されていないケースもあります。企業がディープラーニングに取り組もうとしたときに、このデータ集めで結構つまずきがちです。

データが足りない場合があるのですね。

東京大学の松原仁 次世代知能科学研究センター教授
東京大学の松原仁 次世代知能科学研究センター教授
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松原氏: はい。そのため、例えば画像処理では、画像が1万枚しかなく、これでは足りないといったときに、それらの画像を90度ずつずらして4万枚に水増しして処理させるといった涙ぐましい工夫をする場合があります。

 また、ディープラーニングで主に使われているバックプロパゲーション系の学習では、かなり長い中間層のネットワークに重み付けをしていきます。50層から100層まで作ったときに、重み付けの処理を適切に行うには、膨大なデータ量と演算量が必要になります。

 今、社会問題になっているのは、ディープラーニングが電力を食いすぎることですね。大量のデータでGPUをぶん回すと電力の消費量が増えて、社会に対して深刻な影響を与えかねないのです。

データ量や演算量が必要になり、それらがコストになる。

福島氏: そのため、より少ないデータ量や演算量で高い精度の答えが得られるように、ネオコグニトロンの改良を続けています。少ないデータ量で済むように内挿ベクトル法を取り入れたり、その場合の演算量を減らすためにWinner-Take-All方式(勝者総取り方式)と併用したりといった工夫をしています。