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第1の失敗

 関西にある公共設備の設計と製造を担う中堅企業から、技術コンサルタント(以下、コンサル)の募集がありました。その企業はコンサル慣れしており、「コンペ面談」を実施したいとのことでした。

 コンペ面談とは就職活動の学生と同様の合同面接ですが、1人ひとりの面接ではなく、応募した全員を3~4人のグループに分けて面接する形態です。ただし、学生とは異なり、面接の開始と同時に課題が与えられて、コンサル3~4人が意見を出して競い合います。従って、圧迫面接以上の緊張感があるコンペ(コンペティション、競争)です。

 一般に、受注を望む企業はプレゼンテーション(以下、プレゼン)を実施しますが、その内容は、Q(Quality;品質)、C(Cost;コスト)、D(Delivery;期日)の強みをアピールするものが中心です。中でもQの部分は、その企業が自慢する独自技術を力いっぱいアピールします。これに対し、コンサルのコンペは、QCDだけではなくリスクも語ります。リスクとは、外科手術でいえば、手術の成功率(または失敗率)や後遺症、リハビリテーションなどに相当します。

 当時の私はまだ経験が浅かったため、QCDの自慢を得意げに主張しました。ところが、後で気が付いたのですが、競合のコンサルはほぼ全員、リスクまできちんと説明していました。自慢話だけをして、きちんとリスクを語れないコンサルは、日本だけではなく世界でも信用を落とすことにつながります。

コンサルという仕事

 医者や弁護士や警察官の仕事は、映画やテレビドラマでよく取り上げられるので多くの人が理解していることでしょう。しかし、筆者のような設計コンサルの仕事は、映画やドラマには登場しませんし、詳しく説明してもなかなか理解してもらえない職種です。しかも、経営コンサルの専門書はありますが、設計コンサルのそれは皆無です。

 私の事務所の話ですが、関東以北の企業では、なかなか雇ってもらえません。私の出身である東京の下町の職人は、全てを自分一人で成し遂げることを美徳としています。こうした“空気”がコンサルの雇用契約と関係しているのかもしれません。そうそう、大阪の中小企業の集結で成功した「まいど1号」という人工衛星がありますが、私は東京の下町では成立しないのではないかと思っています。

 一方、コンサルを雇うのがとても上手だと私が感じているのが、関西にある企業や韓国の企業です。特に韓国の大企業の場合、外国人技術者の勧誘と我々のようなコンサルが急成長を支えたと言っても過言ではありません。その分、韓国の大企業は優秀なコンサルを選別します。我々コンサルは、とても厳しい関門をくぐり抜けなくては採用されません。その関門が、先述のようなコンサルコンペです。

 試験官は技術系役員と思われる人が2~3人で、面接を受けるコンサルは先の通り、3~4人です。面接会場にはホワイトボードが数台設置されており、ある技術課題が与えられます。それを解決する手段について面接官から圧迫面接を受ける中、同業のコンサル同士が潰し合いの連続コンペを繰り広げます。面白いことに(?)、名刺に数多くの資格を記載したコンサルから潰れていくような気がします。これは勝手な推測ですが、たくさんの資格を持っている人ほど、かえって「これ1本!」という専門性で勝負しようとする人と比べて気概に欠けるのかもしれません。

図●潰し合いの圧迫面接
図●潰し合いの圧迫面接
(作成:國井技術士設計事務所)
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