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第4の失敗

 日本企業の多くに「設計書」がないことを、以前のコラム「國井設計塾予備校」や、拙著『ライバルを打ち負かす設計指南書 攻めの設計戦略』(日経BP)で何度か指摘してきました。賛同を得ている半面、反感する読者もいることでしょう。

 私の事務所の主たる業務は「設計改革」です。中でもトラブル未然防止手法(FMEAやFTA)と超低コスト化手法が定番の注文ですが、最近増加しているのが、テレワークを利用した「高速設計法」や「標準化/共通化/ユニット化/モジュール化」です。

 実は、私が最も得意とするコンサルテーションのメニューは「設計書による設計業務の改革」ですが、なかなか受注できていないというのが現状です。

 その要因を事務所のスタッフ一同で推定してみました。

(1)設計書の完全導入と効果が得られるまでに最低4年かかる

(2)クライアント企業のベテラン設計者が反論する

(3)私の事務所の費用対効果のアピール不足

 以上が分析結果です。ここまでサラリと記述しているように見えますが、かなり気持ちはへこんでいます。なんと儲(もう)からないコンサルテーションメニューなのかと。

設計書って何?

 図1に設計フローを示しました。私の事務所の調査によれば、多くの日本企業で見られるのが、右側の「手抜きの設計フロー」です。

 なぜ手抜きかというと設計書がないからです。私の事務所が調べたところ、少なくとも第2次世界大戦中には日本企業に設計書が存在していました。その成果物が戦闘機の「零式艦上戦闘機」や「隼」、戦艦の「武蔵」や「大和」です。それが手抜きの設計フローに移行してしまったのは、日本が敗戦国となり、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって航空機の開発を禁止されたためだと私の事務所では分析しています。

図1●正統派の設計フローと手抜きの設計フロー
図1●正統派の設計フローと手抜きの設計フロー
(作成:國井技術士設計事務所)
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 実は、設計書の中で最も重要な要素が、左側の「正統派の設計フロー」の中にある「設計思想とその優先順位」です。それが最も色濃く出る成果物の1つが戦闘機です。従って、航空機の開発禁止⇒設計思想とその優先順位の設計概念の省略⇒設計書不要論⇒「何でもあり」の過剰品質商品へと日本企業の開発手法が流れていった。そして、最後には海外を見ずに正当化して「ガラパゴス化」してしまった──と、私の事務所では見ています。

 以降、第4の失敗で記載した要因の(1)~(3)を解説します。

設計書の導入には最低4年かかる

 かねて、日本企業は社内で改革を推し進めてきました。例えば、人事改革や製造改革、調達改革などが盛んでした。しかし、設計部には鉄の扉があるのか、なかなか改革に着手できません。それに気づいたある企業の社長や技術系役員から私の事務所にコンサルテーションの依頼が入りました。私は図2に示す厚い設計書のサンプルを持参して面談へと向かいました。

図2●分厚い昔の設計書
図2●分厚い昔の設計書
(作成:國井技術士設計事務所)
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 面談の初っぱなから、私はこう直言しました。「創業以来ずっと設計書を作成しない手抜きの設計行為をしてきた貴社が、設計書による設計改革を実施しようとすれば、成果が出るまでに少なくとも4年はかかりますよ。覚悟してください」と。

 これにより、いくつかの企業は引いてしまいました。例えば、リハビリ専門医が「一気には回復しませんが、あなたの努力次第で徐々にその効果が表れますよ」と助言した方が素直に聞けますよね。私にもそうした配慮があってもよかったと反省しています。

 なお、図2に示した設計書は、現在、Excelを利用したDQD(簡易設計書)に簡素化され、威圧感を軽減しています。