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第5の失敗

 いつも強気な発言をしている私ですが、自分の身に危険が及んだり恐怖感を覚えたりする場合は、さすがに躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。今回はそうした経験について話しましょう。日本企業における「脱税」や「技術的不正行為」に関してです。

 節税については、経営コンサルタントなどを雇い、海外の銀行や海外資産などを利用したグローバルな節税の指導を受ける企業は珍しくありません。しかし、行き過ぎた節税の果てに脱税へと手を染めてしまう企業がないとは言えません。

 また、高品質でしか戦う術(すべ)を持たない日本企業は、強みとする高品質があだとなり、新興国の企業からコストパフォーマンスで攻め込まれても、さらに品質向上を追求します。ところが、低コスト化を前提とした高品質の追求には限界があります。結果、技術的不正行為へと手を染めてしまうケースがあるのです。

 詳しくは明かせませんが、設計コンサルタントとして脱税や技術的不正行為を知ってしまったことがありました。数少ない経験なので統計などは取れませんが、私はその際、以下のことに気づきました。

(1)企業の脱税は事前に社内で発覚している。
(2)企業の技術的不正行為も事前に社内で発覚している。

 数年前に発覚していることすらあります。企業の外部監査役でもなく、社外取締役でもなくて、企業からすれば「いつでもクビにできる」設計コンサルタントという立場の私には何もできませんでした。私はその時のことをとても後悔しています。

 私には税金関係を論じる資格も知識もないので、この先は技術的不正行為に関して詳述したいと思います。

「技術士法」に記されていること

 私は、日本技術士会に所属しています。技術士とは文部科学省所管の国家資格認定制度です。私の専門は機械部門(機械設計/設計工学)です。

 国家資格故に、大変厳しい「技術士法」が存在します。中でも「技術士等の義務」を記した「第4章の第45条の2」には、「技術士等の公益確保の責務」についての記載があります。具体的には、「技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たっては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない」と記されています。

 例えば、技術コンサルタントを雇った企業(雇い主)が、公共の安全や環境の保全、その他の公益を害するような場合、事前に、かつ積極的に「害することのないよう努めなければならない」のです。もう少し分かりやすく説明すると、クライアント企業において不正行為が社内で発覚した場合、早急に公開することを促さなくてはならないのです。「技術士法」はとても重要な内容であるため、技術士試験の筆記試験や面接試験でも度々登場します。

 今思えば、これを怠ったと第三者から指摘を受けたとしたら、私は反論できないと猛省しています。ただ、言い訳を許されるのであれば、前述の通り、企業がいつでも契約を切れる設計コンサルタントという立場では、実質的に何もできないというのが実態だと思います。

ハインリッヒの法則を応用する

 しかし、国家資格を有しながら何もできないままでは、「宝の持ち腐れ」となってしまいます。そこで、設計コンサルタントとして技術的不正行為の「再発防止」を提案したいと思います。「ハインリッヒの法則」を応用するのです。

 ハインリッヒの法則とは、米国の技師であったハインリッヒ氏が発表した労働災害に関する経験則です。彼は「1対29対300」という法則を発見しました。これを「ハインリッヒの悪魔の法則」と呼ぶコンサルタント仲間もいます。なぜ、「悪魔」なのでしょうか。ここで、を見てみましょう。

図●ハインリッヒの法則
図●ハインリッヒの法則
(作成:國井技術士設計事務所)
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 1つのAccident (重大事故、重大トラブル)の下には29のIncident (軽傷事故、ユーザークレーム)があり、さらにその下には、300のIrregularity (ニアミス、社内での気づき)が存在したという分析です。つまり、Accidentの再発防止をする「真の対策」には、IncidentとIrregularityに関する対策を打たねばならないということです。