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第10の失敗

 日本には、設計審査を「デザインレビュー」や「DR」と呼ぶ企業が少なくありません。その呼称から来るイメージのためか、海外企業では「承認」と「却下」しかないのに、日本企業の設計審査には次の4つが存在します。[1]承認、[2]条件付き承認、[3]保留、[4]却下です。

 そして多くの設計審査の結果は[1]~[3]となり、[4]の却下と診断されることはほとんどありません。私の事務所のメイン業務は「設計改革」です。そのため、私は設計審査にゲスト審査員として参加することがあるのですが、発表者への余計な気遣いから、ついつい、「却下」の判断をせずに曖昧な審査を何度もしたことがあります。「王様は裸ですよ」とは言えない日本人の悲しい性(さが)がそこにありました。

「承認」と「却下」の定義がない日本企業

 長年のコンサルタントの経験から、次のような特徴を持つ日本企業が目立ちます。

(1)設計審査で「承認」と「却下」の定義がない。

(2)設計審査や日常業務に優先順位がなく、何でも「重要」と言う。

 承認と却下とはある意味「二者択一」、「ゼロ/イチ」の世界ですが、優先順位とはその間に位置する設計ファクターです。今回は(1)に関して解説します。

 設計工学上、設計思想は4つ存在します。①フールプルーフ設計思想と②セーフライフ設計思想、③フェールセーフ設計思想、④ダメージトレランス設計思想です。私の事務所ではこれらを「トラブル完全対策法」と呼び、クライアント企業に指導しています。参考までに示すと、図1が①のフールプルーフ設計思想を分かりやすく示した「絵辞書」です。

図1●設計思想の1つであるフールプルーフ設計思想の絵辞書
図1●設計思想の1つであるフールプルーフ設計思想の絵辞書
(作成:國井技術士設計事務所)
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 つまり、技術的に困難な設計箇所やトラブルの再発防止のためには、設計者がこれら4つの中からその時点で最適な設計思想を選択して審査を受ける必要があります。設計工学上は、選択した設計思想を「設計方針」と呼び、また、それが成立する証明を「設計検証」と言います。

[1]承認:設計方針がOK、設計検証がOKの両立。

[2]却下:設計方針または設計検証がNG、もしくは両方NG。

 特に、[1]の「両立」が重要なポイントです。これが、設計工学上の「承認」と「却下」の定義です。それぞれの企業で定義することを反対はしませんが、まずは、学問を優先してみてはいかがでしょうか。

「承認」と「却下」の判定基準がない日本企業

 クライアント企業の設計審査を観察すると、部長や品質管理部門の部員が承認/却下を下している場合が見られます。ところが、その手元を見ると何も資料がありません。その人の感覚で承認/却下が下されているのです。

 ある企業の設計者が「なぜ、却下なのですか」と審査員である部長に質問するや否や、「俺が却下と言ってるんだから、却下なんだよ」と言われたケースもあるほどです。パワーハラスメントの代表例と言ってもよいかもしれません。

 私は設計コンサルタントとして、あるクライアントにはシンプルに承認と却下を「二者択一」で判断する仕方を伝授しました。承認と却下、そして保留もあえて含めて、それらの判断基準を明文化したのです。これにより、曖昧な判断は容易に改善できました。判断基準がないということは、設計審査に設計プロセス上の重きを置いていないか、手抜きの設計プロセスがまかり通っている証拠です。