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第11の失敗

 私の事務所のメイン業務を一言で言えば「設計改革」です。具体的には「設計書による高速設計」や「設計審査の活性化」「シンプルFMEA」「ミニデザインレビュー」などを指導しています。

 品質保証系や生産技術系の技術コンサルタントは国内に数多く存在します。これに対し、私の事務所は設計系技術コンサルタント一本に絞っています。幸いにも同業者はごく少数で、ライバルは皆無と言っても過言ではありません。この世界で最も刺激的な仕事は2つあると思っています。 (1)競合機分析と(2)競合機潰しです。

 しかし、ビジネスのパイ(利益)は小さいのです。この仕事に酔いしれていた私は、今、猛省しています。

競合機潰し受注のきっかけ

 現在大活躍中の大谷翔平選手や羽生結弦選手、箱根駅伝でダントツ優勝を果たした青山学院大学の選手たち。いずれの世界も分析が行われており、選手やチームの長所や短所を分析します。その分析を監督自身やコーチ陣が担当する場合もありますが、分析を専門とするプロも存在するといわれています。

 私がコンサルタントとして独立した当初、まず優先しなければならなかったのは安定した収入でした。しかし、仕事は思うほど入ってきません。技術には多少なりとも自信があったつもりですが、営業力が皆無だったのです。少しは収入が見込めるようになるのに3年かかってしまいました。

 当時の日本企業は設計改革やデザインレビューなどにはほとんど興味がなく、受注できません。そこで、先輩コンサルタントに何度か相談し、試行錯誤を繰り返した結果、やっとたどり着いたのが「競合機分析」と「競合機潰し」でした。

 さすがに、ライバル企業の競合機に興味がない企業は少なく、受注が増加しました。特に関西系の企業や韓国の複数の大企業は、今でも私の事務所にとって重要なクライアントになっています。

競合機の潰し方

 競合機分析と競合機潰しでどのように潰すかをクライアントへ説明する際に、勘所や根性でなどといった説明では、当然、高額なコンサルタントフィーを支払ってくれるはずはありません。そこで、戦略の「見える化」で説得します。

 その説明の前に、解説しておきたいアイテムがあります。それは「技術者の4科目」である「QCDPa」です。これらはQ(Quality、品質)、C(Cost、コスト)、D(Delivery、開発スピード)、Pa(Patent、特許)のことです。これらのうち、「技術者の主要3科目」が「QCD」です。つまり、競合機分析と競合機潰しは、技術者の主要3科目であるQCDで徹底分析を施し、QCDで潰し込みます。

 日本企業の多くはQにこだわり過ぎており、過剰品質の場合もあります。しかし、Cの低コスト化は口ばかりで本音は興味なし。Dにいたっては、液晶テレビやスマートフォン、リチウムイオン2次電池や電気自動車(EV)を見れば分かる通り、世界的な開発スピードに日本企業は追従できなくなっています。

 要するに、日本企業の製品はまずはCにロックオンし、そこを攻撃すれば大抵は潰れます。しぶとい場合は、次の科目であるDで攻撃を仕掛けると、日本企業の製品は2度と立ち上がることはできません。なぜなら、意思決定が遅いからです。1人では決定できない日本企業の管理職は、会議を開催して全体責任として意思決定しなければなりません。

 それでもしぶとい場合はQCDの3科目のうち、QとCの2科目を1科目にまとめ上げ、「CP」とします。これはコスパフォーマンスのことです。日本企業が最も苦手とするこのCPでライバル製品の息の根を止めます。

 こうした戦法で、日本企業の製品は容易に潰れます。特にダントツ商品ほど容易に潰れます。なぜなら、ダントツとはその時点でのダントツであり、製品寿命が極端に短くなった現在、ダントツとは「瞬間風速」でしかなく、むしろ弱点になりかねません。従って、ダントツ商品の攻略は、私の事務所の得意とするところです。手ごわいのはダントツではなく、長く愛されている商品です。

競合機の長所短所の分析ツール

 こうしたライバル製品を潰す方法は、口頭や文言で解説する分にはとても簡単です。まずは、競合機のQCDを徹底的に分析します。これが競合機分析です。この分析ができて始めて以下の方法でじっくりと、じわじわと潰していきます。

  • QCDの3科目で潰す。
  • QCDにはQ>C>Dの優先順位があり、Qで潰す。
  • Cで潰す。
  • QとCを束ねたCP(コストパフォーマンス)で潰す。
  • Dで潰す。

 以上の5つの潰し方が存在します。

図1●DQD(簡易設計書)に付随するPAM(課題分析表)
図1●DQD(簡易設計書)に付随するPAM(課題分析表)
(作成:國井技術士設計事務所)
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 QCDで潰すのを「見える化」した分析ツールがDQD(簡易設計書)です。図1は、私の事務所が無償提供しているDQDフォーマットに付随するPAM(Problem Assessment Matrix)です。これは、潰すべき設計要因であり、その優先順位を赤→黄→緑の色別順で自動的に示唆してくれます。