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第12の失敗

 私の事務所のコンサルテーションメニューの1つに「技術者の四科目(QCDPa)」があります。QCDPaとは、Q(Quality、品質)、C(Cost、コスト)、D(Delivery、期日)、Pa(Patent、特許)のことであり、Qを最優先に「Q>C>D|Pa」という優先順位が存在しています。DとPaの間にある記号「|」は「どの位置でもなく、とにかく重要」という意味です。

 さて、前回のコラム(第11の失敗)では、「Q」を追い求めすぎて過剰品質になってしまった商品が日本メーカーに氾濫しており、「C」や「D」にロックオンして攻撃すれば、容易に潰せることを説明しました。それでも、潰(つぶ)れないしぶとい商品はQとCを束ねた「CP(コストパフォーマンス)」でロックオンすれば潰せるだけではなく、2度と立ち上がれなくなることを紹介しました。

 このようにQに比べてCに疎い日本企業ですが、「材料の高騰」にはとても敏感です。ある時、私の事務所は地元の企業からコンサルを懇願され、そこで打った対策が「大黒柱を削って屋根が落ちる」と言われているものでした。そう、大黒柱に相当する設計の部分に低コスト化のメスを入れてしまったのです。これは、大工の禁じ手と言われています。

 その結果、見掛けの低コスト化を実現できましたが、目を覆いたくなるほどの欠陥商品になってしまいました。昔のこととはいえ、反省しています。

低コスト化の禁じ手

 もちろん、低コスト化は大切です。しかし、社長が何度も繰り返しそう言っていると、低コスト化のネタが尽き、技術者は禁じ手と言われている大黒柱に相当する部品にまで手を付けてしまう場合が多々あります。しかし、江戸時代の大工は受注競争に勝つために、大黒柱を短くしては屋根に雪が積もって屋根が落ち、大黒柱を細くしては強風で屋根が落ちたという話を私は聞いたことがあります。

 また、あの有名な松下幸之助氏が「カレント商品の10%以上の低コスト化はやってはいけない」と論じたと私は聞いています(図1)。カレント商品とは、現在生産している商品や流通している商品のことです。この文言は、後に各国の経済学者によって証明されたと聞いています。この教えを破ると、リコールなどにつながりやすくなるそうです。

図1●カレント商品に対する低コスト化の限界
図1●カレント商品に対する低コスト化の限界
(作成:國井技術士設計事務所)
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システム工学から見たコストと品質の関係

 韓国企業のコンサルテーションで特に嫌われる表現があります。それは日本人独特の曖昧な次の表現です。

(1)Q(品質)とC(コスト)の最適化を図ろう。

(2)QとCのバランスのとれた商品や生産ラインを目指そう。

 どちらも概念であって、それを「見える化」したのが図2です。

図2●システム工学に基づくQとCの最適化
図2●システム工学に基づくQとCの最適化
(作成:國井技術士設計事務所)
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 図中の赤いポイントが「QとCの最適化ポイント」です。これを「90%ライン」と呼びます。簡単に言えば、部品コストを(左へ向かって)下げていくと、保守コストが上昇していくということです。かつて、日本の自動車企業がこれを実践してしまい、米国でも社会的な問題になったことがあると私は聞いています。この部品コストと保守コストの和を「トータルコスト」と呼びます。逆に、動作信頼性、つまり、部品のQを向上させれば部品コストは急上昇します。保守コストは低下する傾向にありますが、それらの和は急上昇します。

 私の事務所は、図1図2の教えを破り、地元の企業に低コスト化の手段を投じてしまいました。目先の低コスト化は達成できたのですが、品質の低下により、その何十倍もの損失費用を計上してしまったのです。