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第13の失敗

 日本の製造業において人手不足は深刻な問題となっています。私の事務所の調査では、2015年ごろから急激に外国人技術者の採用が増えました。人手不足に悩む中小企業だけではなく、大企業でも増加しました。私の事務所のクライアントには大企業が多く、東アジアや東南アジアからの技術者を多数採用していました。

 例えば、私は設計コンサルタントとして、クライアント企業に対して設計工学に基づく実務設計を指導していますが、そこに外国人技術者が存在する場合は1.5倍のエネルギーと工数が必要となります。コンサルタントとして関わる私も大変ですが、もっと大変なのがその企業のリーダーたちです。優秀な外国人技術者を雇い、数年間におよぶ技術教育やOJT(On the Job Training:職場内訓練)を重ねてようやく活躍してくれるものと期待したにもかかわらず、いとも簡単に退職する外国人技術者が少なくないからです。

 投げやりになったリーダーたちは社長へ直訴します。「いくら熱意をもって指導しても数年で辞めてしまいます。自分の仕事が無駄に思えます」と。この声を受けて、社長は私に設計者指導以外のコンサルテーションを依頼しました。それが、外国人技術者の定着化のコンサルテーションだったのです。

 専門外とはいえ、最適な指導者が見つからず、安易にその仕事を受けてしまった私は、2〜3年が経過しても何の成果も出すことができませんでした。反省すべきは安易で無責任な受注行為でした。

 彼らの中には、東京大学を超えるような難関校や有名大学の出身者もいます。技術はもちろん、語学やプレゼンテーション(以下、プレゼン)にもたけており、社会環境、特に日本の職場環境もよく分析しています。そして、「日本企業ってこんなものか。だったら、祖国にいるか、米国へ渡航すればよかった」と後悔していると感じられました。

 何の成果も出せなかった後、私は無駄なこととは思いつつ、せめて彼らが早期退職に至る理由の糸口だけでも見いだせないかと、退職間際の彼らと何度かヒアリングを重ねました。すると、彼らが日本社会、特に日本人技術者に対して違和感を覚えていることが分かりました。現在も対策手段には至っていませんが、ここに紹介してみましょう。

外国人技術者へのヒアリング結果

  • (1)社内ではあいさつしてくれるけれど、街中では無視される。
  • (2)プレゼンが下手。上司も下手で、何を主張したいのかよく分からない。
  • (3)朝のあいさつがない悲しさ。
  • (4)同時帰宅(退社)を避けられる悲しさ。
  • (5)なんでも「イエス」と言う。
  • (6)日本語で提案すると「ノー(ダメ)」で、英語だと「OK」。
  • (7)社有バスの隣に座ってくれない寂しさ。
  • (8)いまだにブレーンストーミングで発案。
  • (9)「なぜなぜ」問答は、まるで子供用か仙人向けのように感じる。
  • (10)生産現場にある5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)ポスターは子供向けに感じる。
  • (11)上司は優先順位を示さず、相談すると全てが重要と言う。
  • (12)設計書がないのに設計審査ができるのだろうか。
  • (13)設計審査でほとんど誰も発言しない。
  • (14)技術者にランキングも、競争心もない。
  • (15)上司が図面を描けないし、検図もできない。
  • (16)すぐに会議と言い、その連続。
  • (17)電気が分からない機械系技術者、機械を知らない電気系技術者。
  • (18)ISO(国際標準化機構)の更新作業専門の年配社員がいる。
  • (19)東大よりも国際的に格上の母国大学卒だと言うと手のひらを返す。
  • (20)自分が一番、日本が一番だと思っている。
  • (21)正社員よりも派遣社員の実力の方が上。
  • (22)昼間と定時後の職場の雰囲気が違う。
  • (23)始業前のラジオ体操に違和感がある。
  • (24)女性技術者の実力を認めない。
  • (25)常用する「しょうがない」、「仕方がない」は他国語に訳せない。

 どうやら、語学力を含むコミュニケーション不足や、マネジメント力や技術者の実力水準、そしてモラルの低下などに違和感を覚えていることが分かります。

 クライアント先の社長も対策メンバーも私も、原因は語学力を含むコミュニケーション不足だと思っていました。しかし、コミュニケーション不足は一原因であっても、主原因ではないのです。とすると、主原因は何でしょうか。