全1978文字
PR
第15の失敗

 私の事務所のホームページには無料相談コーナーが設置されています。かつて、ここに以下のようなメールが入りました。

 「私は大手企業の調達部に勤務しています。先日先生のブログに『企業の低コスト化活動は調達部が鍵を握っている』と書いてあるのを見て、それをそのまま社内の会議で発言したところ、設計部や製造部、品質管理部などから総スカンを食らいました。あるメンバーは『調達部に何ができるのか』とののしられました」。

 このクライアントは無料のメール相談(コンサルテーション)を希望していたため、アドバイスは全てメールで行いました。従って、言ってはならない文言かもしれませんが、私からのアドバイスもやはり、「無料」の範囲を出ないものでした。どうしてあの時、余計な気遣いなどせずに面談を提案し、私の事務所とのコンサルテーション契約へ誘導しなかったのかと悔やんでいます。

 今回のクライアントも私も、もっとビジネスの在り方を学ぶべきだったと深く反省しています。

低コスト化の主役は調達部、その役割は材料の集中購買から

 私の事務所のコンサルメニューの1つに、私が「技術者の4科目」と名付けた「QCDPa」、つまり、Q(Quality:品質)とC(Cost:コスト)、D(Delivery:期日)、Pa(Patent:特許)があり、これらを強化する指導を行っています。

 特に、戦後の日本企業は「安かろう、悪かろう」の苦い経験から学んだTQC〔全社的品質管理、現在はTQM(総合的品質管理)と呼びます〕活動の影響からか、Q(品質)に力を入れすぎ、いつの間にか過剰品質に進んでしまいました。行き先と経営の“バイブル”を失った日本企業は、相変わらず品質を連呼し、揚げ句の果ては「品質の不正行為」へと走りました。20年も30年も品質不正を続けていた大企業の失態に多くの国民が失望しているというのが現在です。

 こうした日本企業にとって、弱点は過剰品質の裏返しとも言えるC(コスト)に無頓着なことです。かつて日本企業の低コスト化では、ベンダーいじめが目に付きました。その悪習慣が今も継続している企業は少なくありません。さらに残念なことは、それらの企業が日本を代表する大企業であることです。今ならSNS(交流サイト)で「恫喝(どうかつ)された」などと書かれそうです。

 この悪(あ)しき現象は、調達部が低コスト化活動の主体となって自部門はもちろん関連部門を統制してこなかったことに原因があります。

 調達部を主体とする低コスト化活動の「初めの一歩」は、社内における使用材料の集中購買です。主体とはリーダーシップの意味です。材料の集中購買は、調達部のリーダーシップの下、設計部などの関連部門が協力しなければ成り立ちません。

図1●ある企業における部品の集中購買
図1●ある企業における部品の集中購買
ADOは仮名。(出所:國井技術士設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 では、私の事務所のクライアント企業における部品の集中購買の事例を見てみましょう。図1の上方は「切削用丸棒材料の入手性一覧」であり、下方は「板金材料の入手性一覧」です。クライアント企業の調達部は「集中させた」と言いますが、集中購買につながる材料の統一が進んでいません。

 原因は、調達部が主体になっていないからです。材料を統一できない主要因は設計部にあります。あれもこれもと材料が存在すると、設計には便利な「何でもあり」の材料倉庫にしか見えません。

 これを避けるには、調達部が「集中購買のために、この材料とその材料を共通にしなさい」と、設計部に対して依頼ではなく命令(指示)しなければなりません。もう少し具体的に言えば、私の事務所によるコンサルティングでは、設計部と合意の下で図1に記した材料の種類を半減するように指示します。

 ただし、ここで問題となるのは「半減」の根拠です。「感覚」や「何となく」というのは根拠になりません。これでは低コスト化のチームメンバーや設計部は納得しません。