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 「順調に禁煙を継続できていますね」――。禁煙外来の診療中、高沢内科医院(福井市)の高澤洋介院長は治療用アプリを活用する30代前半の男性患者にこう語りかけた。男性患者はこれまで何度か禁煙治療を試みたものの途中で喫煙してしまい、治療が続かないことに悩んでいた。そこで高澤院長は従来の治療より患者が負担する費用が高くなることを説明した上で、医療機器のアプリを利用する治療法を紹介。患者から「これまでとは違う治療法を試してみたい」との意向をうけて2021年2月に治療を開始した。

治療用アプリのデータを確認しながら禁煙外来を実施する様子
治療用アプリのデータを確認しながら禁煙外来を実施する様子
(出所:高沢内科医院)
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 男性患者はこれまで、禁煙治療で定められている5回の診療のうち2回目の診療の前に喫煙してしまうことが多かった。高沢内科医院での治療は2回目の診療も終了し、治療を継続しているという。高澤院長が患者に処方したのはCureApp(東京・中央)の治療用アプリ「CureApp SC」だ。

 CureApp SCは医師による診療と診療の間の空白期間の禁煙治療を支援するアプリで、2020年8月に国内で初めてプログラム医療機器として薬事承認を得た。アプリは患者が入力する体調や治療状況に合わせて、個別化したガイダンスを提供する。例えば患者が「たばこを吸いたくなった」と入力すると、「ガムをかみましょう」「部屋の掃除をしましょう」といった具体的な行動を提案する。また、付属する一酸化炭素(CO)チェッカーで計測した呼気中のCO濃度をアプリに記録して禁煙の効果を可視化するほか、患者がアプリ内に日記をつけることで禁煙状況を医師と共有できる。

 高澤院長はもともと既存の禁煙治療の成功率が低いことに課題を感じていた。治療の1年後に禁煙を継続できるのは全体の3割ほどといわれている。「10分程度の診療では患者の人生観や価値観を変えるのに限界がある。自分もかつて喫煙者であったため、禁煙しようとしても孤独や不安を感じたときに喫煙したくなる気持ちがよく分かる。治療用アプリは治療中の患者に孤独を感じさせにくくする。治療用アプリはもう1人の主治医だ」と高澤院長は話す。

治療用アプリの役割
治療用アプリの役割
(出所:日経クロステック)
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 治療用アプリは診療と診療の間の治療を支援するだけではなく、診療にも生かせる。患者は次の診療までの約1カ月間、呼気中のCO濃度と日常の気持ちや行動などを治療用アプリに記録する。高澤院長はアプリの記録を医師用アプリであらかじめ確認してから患者を診療しており、患者の調子の良しあしを判断しやすくなったという。「良好なコミュニケーションで患者と関係性を構築できると、患者の治療に対するモチベーションも上がると感じる」と高澤院長は話す。