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 「治療用アプリなどデジタル治療(デジタルセラピューティクス:DTx)の日本での開発は先が見通しにくく、本腰を入れて取り組めない」――。CureApp(東京・中央)のニコチン依存症向けの治療用アプリが国内で初めて薬事承認と保険適用を受けたことが追い風となり、DTxの開発に取り組む企業が増えている。しかしその一方で、日本における治療用アプリの開発に不安を感じる企業も少なくない。

 企業が日本でDTxを開発する際の課題として掲げる主な点は(1)開発する製品がプログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD)に該当するか分からない、(2)審査の考え方が不明でどのような臨床試験を実施すればいいのか分からない、(3)承認取得後どのように保険適用されるのか予想がつかない――というものである。

 このままでは、DTxを含むプログラム医療機器の日本での実用化が海外に比べて遅れる「プログラム医療機器ラグ」が発生しかねない。この状況を変えようと、厚生労働省は2021年4月に新たな施策「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略」を本格的に開始した。医療分野への新規参入の企業も歓迎し、DTxの開発を後押しする。

プログラム医療機器(SaMD)とデジタル治療(DTx)の関係性
プログラム医療機器(SaMD)とデジタル治療(DTx)の関係性
(出所:日経クロステック)
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 (1)の「開発する製品がプログラム医療機器に該当するかどうか」は、企業の事業戦略に大きく関わる。プログラム医療機器に該当する場合は、臨床試験を実施し安全性と効果を示したうえで厚労省から薬事承認を得て販売する。該当しない場合は承認を得る必要がないため早く販売できる。一方で、薬事承認を得なければ保険適用のステップに進めないため、企業はそれ以外の販売戦略を考える必要がある。

 DTx向けアプリを開発していたあるベンチャー企業は、相談先によってプログラム医療機器への該当性の判断が揺らいだため、開発終了を判断するまでに時間を要した経験を持つ。開発当初、手順にのっとり都道府県の担当部署にプログラム医療機器かどうかを確認し、「該当する」との回答を得た。その後、準備を整えて臨床試験などについて相談するため医薬品医療機器総合機構(PMDA)に赴いたが、最終的にプログラム医療機器に「非該当」と判断された。同社はプログラム医療機器として製品の開発と製造販売を進める方針だったため、事業戦略に合わずそれまで投資してきた製品の開発を泣く泣く終了したという。

 そもそも「開発中の製品がプログラム医療機器に該当するか分からない」という課題が生まれる理由は、医薬品医療機器等法(薬機法)で定義される医療機器の考え方を補う必要があるからだ。厚労省はこれまでも通知を公表し、プログラム医療機器の考え方を示してきた。ただ、あまり具体的ではなく企業側や都道府県が判断しにくかった。

 そこで厚労省は2021年3月31日に、DTxを含むプログラム医療機器の該当性に関するガイドラインを新たに公表。プログラム医療機器に該当する具体的な事例のほか、判断するためのフローチャートを示した。「ガイドラインを基に企業が具体的な質問や議論をしやすくなるのではないか」と厚労省医療機器審査管理課 プログラム医療機器審査管理室の福田悠平室長は話す。また厚労省のウェブサイトには企業の了承が得られたもので数が限られるものの、過去にプログラム医療機器の該当性を判断した事例を掲載している。