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量子暗号通信はいつ身近な存在になる?

2025年ごろから普及が加速し、35年ごろまでに幅広く社会に浸透すると予測します。最終的にはグローバルな量子暗号通信プラットフォームを構築し、人工衛星を使って大陸間で暗号鍵を配送できるように育っていくでしょう。

 量子暗号通信の社会実装が世界的に進み始めています。技術進歩のスピードが加速する昨今において、新しい技術の普及を先読みするのは大変難しいですが、25年ごろから普及が加速し、10年ほどかけて、幅広く社会に浸透すると予測します。

 国内では金融情報や医療情報などの送受信で、実用をにらんだトライアルがすでに始動しています。東芝は野村証券などと共同で、量子暗号通信の実証実験を開始しています。個人の遺伝子情報を含むヒトゲノム解読データや、製造分野での秘密データなどの送受信でも、実証実験でその実用性が確かめられています。

 国外で存在感を示すのは中国です。中国は17年、北京と上海の間で大規模な量子暗号通信ネットワークを構築しました。複数の金融機関がインターネットバンキングの取引情報の通信や、データのバックアップなどの用途に利用しています。このネットワークは、今後さらに中国全土に広げられる計画です。

 欧州では各国の連携により研究が加速しています。その原動力の一つが、EU(欧州連合)の支援する量子暗号通信プロジェクト「OpenQKD」です。同プロジェクトは19年に開始し、東芝や量子暗号通信大手スイスID Quantiqueなど38団体が参加しています(21年5月時点)。その内容は多岐にわたり、5Gネットワークのセキュリティー向上や、金融情報のやりとりに量子暗号通信を使う予定です。

 東芝が今後目指すのは、世界中をつなぐグローバルな量子鍵配送プラットフォームの実現です。量子暗号通信は現在、局地的な社会実装が始まったばかりの技術です。ですが最終的には、世界中の人々が安心して情報通信ネットワークを活用するための基盤となる存在に育てたいと考えています。

 そこで解消すべき主な課題となるのは、①鍵配信量、②装置の小型化、③長距離間でのシステム接続です。