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これまで車載向けLiDAR製品で影の薄かった日本のメーカーだが、MEMSミラー型×dToF式のLiDARでは、一定の存在感を見せ始めた。

Appleで成功した技術の2匹目狙う

 パイオニアに続こうとするのがソニーや東芝だ。ただし、両社はLiDARの要素技術全部を開発はしておらず、それぞれの中核技術である受光素子部分に研究開発の資源を集中させている。

 これらの受光素子は共に、光ステアリング技術として回転式、またはMEMSミラー型かつ非同軸を前提とした測距技術「ダイレクトToF(dToF)方式」向けの技術(図4)である(dToF式LiDARの長距離化技術については、「dToF式LiDARの長距離化に村田製作所が貢献へ」も参照)。

dToF(direct Time of Flight)=レーザー光パルスの送信から測定対象に反射して受光するまでの時間差を測定して距離を割り出す方式。対して、「indirect ToF(iToF)」は、送信光と受信光の位相差を測定して距離を割り出す。

 ソニーはすでに、米Appleの「iPhone 12 Pro」のLiDAR向けにこのdToF技術を提供しており、それを車載向けにも生かそうという戦略だ。しかも、車載向けでも受光素子はそのまま外販して、製品としての車載LiDARは販売しない方針である。製品にしてしまうと中核技術でない部分で性能の大部分が決まってしまい、レッドオーシャンの市場で埋もれてしまうという判断なのだろう。

イメージセンサーの技術をつぎ込む

 ソニーが車載LiDAR向けに開発した受光素子は、極めて高い感度を実現できる単一光子アバランシェダイオード(SPAD)を189×600個アレー化したものだ(図7)。非同軸であることでこうした2次元アレーの受光素子が必要になる。

図7 ソニーはイメージセンサーの技術を駆使
図7 ソニーはイメージセンサーの技術を駆使
ソニーが2021年2月の国際学会「ISSCC 2021」で披露したLiDAR(a)。ただし、発売予定はない。曇天で高い反射率の物体であれば300mまで測距できる(b)。SPADセンサーの画素は10µm角と小さく、受光時のデッドタイムもPA(passive quenching)で6nmと短い。有効画素数は約11万(189×600画素)だが、通常時は3×3画素を加算してを1画素として利用。長距離測距時、または高感度モードでは6×6画素を加算するため、解像度は低下する。センサーとロジックICはCu-Cu接続で貼り合わせる(d)。(写真:ISSCC/ソニー)
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 工夫のポイントは測距する距離に応じて、1画素として利用するSPADの数を変えたことである。通常は、SPADの3×3個のアレーを1画素として利用する。このため、通常時の解像度は63×200画素、ただしこのうち、アレーの端の32画素分は使わないため、実質的には63×168画素だという。

 一方、長距離の場合は、6×6個のアレーを1画素とする。光子が当たる的を文字通り広げて感度を高めるわけだ。「解像度は落ちるが、飽和しにくくなってダイナミックレンジは高まる」(ソニー)。こうした技術はソニーがカメラ向けイメージセンサーで実用化している「Quad Bayer Coding(QBC)」などの応用とみられる。

 これに加えて、太陽光や対向車のヘッドライトなどの背景光を除去する技術も実装。「真夏の快晴時の直射日光に相当する11万7000ルクスの明るさの中でも、200m先の反射率95%の対象を測距できる。曇りでしかも反射率95%であれば、300mでも測れる」(同社)。