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 自動車の資源採掘から生産、流通、廃棄までライフサイクル全体で二酸化炭素(CO2)排出量を評価するLCA(Life Cycle Assessment)。欧州や中国で進む規制化の検討を受けて逆風となるのが、炭素繊維強化樹脂(CFRP)やアルミニウム(Al)合金、ホットスタンプ成形である。車体の軽量化に貢献するために採用が広がってきたが、製造時のCO2排出量が大きい。今後、自動車の部品選定に大きく影響しかねない。素材や部品各社は対策に動き出した。

LCAで鉄鋼の環境性能は高いとされる
LCAで鉄鋼の環境性能は高いとされる
(写真:BMW)
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 「10倍」に焦点を当てることで、CFRPに対する否定的な見方を増幅させている――。

 国内のCFRP関係者が憤るのは、日本鉄鋼連盟などが頻繁に発表する鉄鋼とCFRPの数値である。製造時における鉄鋼のCO2排出量が1kg当たり約2.3kg(以降のCO2排出量は全て素材1kg当たりの数値)なのに対して、CFRPは約21kgと吹聴する(図1)。CFRP関係者にしてみると「CFRPは鉄鋼に比べて環境性能が10倍悪い」という「ネガティブキャンペーン」に思えるわけだ。

図1 CFRPとアルミの環境性能は低いのか
図1 CFRPとアルミの環境性能は低いのか
日本鉄鋼連盟が公表する自動車の素材別で見た製造時CO2排出量。鉄鋼が少なく、CFRPとAl合金は多い。日本鉄鋼連盟の資料を基に日経クロステックが作成。
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 確かに、炭素繊維協会が過去に調査した炭素繊維のCO2排出量は22.4kgと近い値である注1)。ただし、あくまでも炭素繊維自体の数値であり、樹脂を母材とした複合材料のCFRPにすると、実際はもっと少ない。

 樹脂の排出量は種類によって異なるが、日本航空宇宙工業会の資料でせいぜい2~5kgである。CFRPにおける炭素繊維の含有量が質量比で50%くらいとすると、CFRPのCO2排出量は15kgと大きく減る。

 CFRP関係者が腹を立てる気持ちは分かるが、21kgではなく15kgという値は、それでも十分に多い。自動車の代表的な軽量化素材であり「電気の塊」といわれるAl合金ですら、約11kgにとどまる。

 CFRP関係者が製造時CO2排出量の値に神経をとがらせるのは、このままではCFRPが自動車の素材として排除されかねない危機感を覚えるからだ。欧州や中国で、LCA規制の検討が進む。いずれ規制が始まれば、CFRP製造時の排出量が多いことは、致命傷になりかねない。

注1)素材や部品のLCAにおけるCO2排出量を集めたデータベースとして、世界で有名なのは「GaBi」である。自動車メーカーの多くが利用する。もともとドイツ企業が開発していたが、現在は米Sphera Solutionsが買収して販売する。同社日本法人マネージャーの大住政寛氏によると、データベースの全てを利用するのに700万円くらいかかるという。