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冷間プレスに勝る部品もある

 熱間プレスは消えるのか。フタバ産業は「投資した分は使い切る」(同社生産技術本部副本部長の中西良行氏)と、工夫を凝らして使い道を模索する。熱間プレスによる加工性の高さを生かせば、部品によっては冷間プレス材と十分に競えると見込む。中西氏は「冷間プレスではなし得ない成形がある」と考える。

 例えば数十cmの深絞りが必要な部品では、熱間プレスの場合は1回の成形で済む可能性がある。超ハイテンを冷間プレス1回で深く絞るのは難しい。ワレやシワが生じやすく、普通は4~5回に分ける。するとCO2排出量が増える。

 加工の工夫に加えて、フタバ産業が取り組むのが、CO2排出量の大半を占める加熱時のエネルギー使用量の削減である(図2)。全体の使用量のうち、3~4割を占めるとみられる。

図2 熱間プレス工程
図2 熱間プレス工程
手前が加熱炉。(写真:フタバ産業)
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 例えば清掃などによる加熱炉の停止頻度を「他社よりも圧倒的に抑えている」(中西氏)と明かす。加熱炉をいったん停止して冷やすと、温めるのに時間がかかり、多くの電力を消費する。停止回数の抑制はCO2排出量削減に直結する。さらに将来は電力による加熱ではなく、天然ガスを燃やして加熱することを検討する。これも排出量削減効果を期待できるという。

 とはいえ、フタバ産業のプレス製品における熱間プレス材の比率は1割程度にとどまる。主役は冷間プレス材であり、LCAの影響は限定的だ。

 熱間プレス材の比率が大半を占めるとされ、大きな影響を受けるのがプレス世界最大手のGestampである。世界中に100を超える熱間プレスのラインを有する同社は、かねて対策を進めてきた(図3)。「工場内の電力やガスの使用量を見える化し、節約や最適化を図っている」(Gestamp R&D BIW DirectorのMiguel Ferrandez氏)と地道に取り組む。

図3 Gestampの熱間プレス工程
図3 Gestampの熱間プレス工程
鋼板を熱する工程でエネルギーを多く使用する。(写真:Gestamp)
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 既に部品によっては、CO2排出量で冷間プレス材を大きく下回る水準を実現しているという。代表例がセンター(B)ピラーである。厳しい側面衝突試験に対応するため、高い強度と衝撃吸収を両立する必要がある難しい部品だ。Gestampの試算によると、Bピラーの成形と鋼板の製造の合計CO2排出量は熱間プレス材で22kgと、冷間プレス材の34kgを大幅に下回る。

引っ張り強さで冷間プレスを引き離す

 工場のCO2排出量削減に加えて、設計の工夫によって実現した。冷間プレスでBピラーを造る場合、外側の上部(1.2GPa)と下部(590MPa)、さらに内側(940MPa)と補強部材の合計4部品を組み合わせる。それぞれ冷間プレスした後で、スポット溶接する。