全2357文字
PR

 クボタは幅広い事業領域でDXの取り組みを展開する。農業関連と並んで主力事業に位置づける水関連事業でも取り組みが進む。

 2021年3月のある日、福井市の南側を流れる江端川に隣接する舞屋雨水ポンプ場。クボタの子会社でポンプ設備などを手掛けるクボタ機工の社員が、設置から20年近く経過した巨大なポンプの点検作業に取り組んでいた。市内の住宅地などに降った雨水を水路からくみ上げて江端川に流し洪水を防ぐ、防災上の大役を担うポンプだ。

ARとAIでポンプ点検高度化

 ポンプ場の開口部からファイバースコープを水路内に挿入し、ポンプの水に漬かった部分にどの程度サビが発生しているかを確認し、部品のサビ落としや交換などの対処法を検討するための点検である。活躍しているのが、米マイクロソフトのARゴーグル「HoloLens 2」と人工知能(AI)だ。

HoloLens 2とAIを使い、ポンプ場の設備を点検する様子
HoloLens 2とAIを使い、ポンプ場の設備を点検する様子
写真提供(右下):クボタ
[画像のクリックで拡大表示]

 作業者の1人がヘルメットとともにHoloLens 2を装着し、水路内に挿入したファイバースコープからの映像を見る。作業者と同じ視点の映像を、HoloLens 2のカメラとオンライン会議ツール「Teams」を介し、遠隔地でもリアルタイムで見られる。遠隔地の技術者が作業者に指示やアドバイスをしたり、発注した自治体などの担当者が点検の様子を確認したりできる。

 加えて、ファイバースコープで撮影した映像は後日AIで解析。サビのある箇所が進行度合いに応じて赤色や黄色でハイライト表示される。これまでは作業者が目視でサビの進行度を判定していたが、作業者によって判断がぶれることもあった。

 AIによる判定にはぶれがなく、ヒートマップのように色づけされるため、顧客である自治体などの担当者にも一目瞭然だ。サビを検知するAI技術は、AI専業スタートアップのAutomagiが提供した。

 HoloLens 2、サビ検知AIとも現在は実証実験中だが、今後は「他社製のポンプを含めて点検サービスを高度化し、点検業務の受注拡大につなげていきたい」(クボタ機工の橋詰和哉事業推進企画部部長)。

 農作業の現場で活躍しているのが、LPWA(ローパワー・ワイドエリア)とIoT(インターネット・オブ・シングズ)によるポンプの管理だ。クボタは農場の水管理のシステム製品「WATARAS(ワタラス)」を国立研究開発法人の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と共同開発した。給水・排水ポンプにアクチュエーターや水位水温計、LPWAの通信モジュールなどを取り付ける。

農地へ行かなくても、水温や水位などをリアルタイムに把握
農地へ行かなくても、水温や水位などをリアルタイムに把握
画像提供:クボタ
[画像のクリックで拡大表示]
水位などに応じ、注水の条件をきめ細かく設定
水位などに応じ、注水の条件をきめ細かく設定
画像提供:クボタ
[画像のクリックで拡大表示]
農場向けの水管理クラウドサービス「WATARAS」
農場向けの水管理クラウドサービス「WATARAS」
写真提供:クボタ
[画像のクリックで拡大表示]