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 国立競技場や渋谷スクランブルスクエア第1期(東棟)、高輪ゲートウェイ駅、角川武蔵野ミュージアム――。最近の建築・都市におけるビッグプロジェクトで隈研吾氏が携わったものは実に多い。いまや一般の人々に対する知名度も上がり、建築設計者として飛ぶ鳥を落とす勢いといえるだろう。しかし、建築界で物議を醸した「M2」(1991年完成)から、現在に至るまで隈氏の“進化”はそう単純なものではなかった。

 「M2がトラウマになり、埋めればいいと考えた時期もあった」。隈氏はインタビューの中で自身の設計活動を振り返ってそう語った。インタビューは、日経アーキテクチュア前編集長で現在は画文家の宮沢洋氏が聞き手となり、書籍『隈研吾建築図鑑』(2021年5月11日発刊予定)を執筆するに当たって実施した。下に、その抜粋と動画を紹介する。

宮沢 洋氏  インタビューを前に、まず私の方で独自に隈建築を4つに分類しました。「びっくり系」「しっとり系」「ふんわり系」「ひっそり系」。それについてはどう思われましたか。私は特に「ふんわり系」に 注目していて、ここの領域は、いわゆる有名建築家の方がこれまであまり力を入れてこなかったところだと思うんです。隈さんはこの10年くらい、その領域で魅力的な建築をつくってこられた。

隈建築を4つに分類し、それぞれの進化をたどった(資料:「隈研吾建築図鑑」より抜粋。絵や文は宮沢洋氏による)
隈建築を4つに分類し、それぞれの進化をたどった(資料:「隈研吾建築図鑑」より抜粋。絵や文は宮沢洋氏による)
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隈 研吾氏   ここでいう「ふんわり系」というのは、僕自身は「ユルイ系」と言っています。緩くてのんびりな建築。そこを見つけ出してくれたのは、すごく新しいと思いました。僕自身、意識的にそこに関わるようにしていたので。

 今までの建築家はあまり関わらなかった部分を、僕は意識的に受け入れている。そこにニーズが来ているのに、以前の建築家ならばそれを断っていた。僕の方から積極的にそこの領域をつくり出している部分もある。この本の中に、「これまでは地域の設計事務所や大手設計事務所がやっていたプロジェクトだ」と書いてあって、言われてみたらそうだなと。特に、地域の設計事務所がやっていたんでしょうね。

 建築家として名を成すには「びっくり」か「しっとり」のどちらかでブレークするのが一般的で、そこで有名になると、普通はそこから広がろうとしない。隈さんの言う「ユルイ系」、本書で言う「ふんわり」を積極的にやろうとしている有名建築家は、伊東豊雄さん(1941年~)くらいじゃないかと……。

 伊東さんは3.11(東日本大震災)を機に、自分はユルイ系をやるんだという意識を持たれたように見えるけれど、体質的にそういう人じゃないように思う(笑)。行ってみると緩くないものが多い。ユルイ系を緩くやるのは意外に高度な技を必要とするんですよ。