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 脱炭素でなければ、退場─。世界のビジネスのルールが書き換えられた。温暖化ガスのうち、地球温暖化に与える影響が最も大きいと言われる二酸化炭素(CO2)の排出を抑えずに事業を展開する企業には、容赦なく「レッドカード」が突き付けられる。

 罰則として世界の市場からはじき出され、まともに経営ができなくなる。世界中の企業にとって、CO2排出を実質ゼロ(排出と吸収で差し引きゼロ)にする「カーボンニュートラル」が必須の時代に突入した(脱炭素が分かるキーワード「カーボンニュートラル」参照)。2021年はカーボンニュートラル元年と言える。

技術者の仕事も脱炭素が前提に

 厳しいこの現実に、技術者も無縁ではいられない。21年度からは本格的に自らの事業部や部署、そして個々人の仕事に脱炭素の要素が盛り込まれるはずだ。早晩、カーボンニュートラルに寄与する研究や技術、製品開発でなければ、企画や稟議(りんぎ)が通らない時代がやってきそうだ。

 経済産業省によれば、50年までにカーボンニュートラルを目指す国・地域は、既に120を超えている(図1。先導したのは欧州各国だが、世界の潮流を大きく変えたのは、世界の2大国である米国と中国だ。かねて両国は、経済成長の妨げになるとしてCO2排出の抑制に背を向けていた。ところが、20年9月、中国は他国と比べて10年遅れではあるものの、60年までにカーボンニュートラルを目指すと表明。突然の方針転換で世界を驚かせた。

図1 2050年カーボンニュートラルを宣言/約束した国・地域
図1 2050年カーボンニュートラルを宣言/約束した国・地域
120を超えている。後ろ向きだった中国も2060年カーボンニュートラル宣言を行った。(経産省の「2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き」を基に日経ものづくりが作成)
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* 2050年までのカーボンニュートラルという目標は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が18年に発表した特別報告書の内容に基づいている。同報告書には、「世界の平均気温の上昇を産業革命前の1.5℃に抑えるには、世界は50年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする必要がある。これは挑戦的だが、不可能ではない」と記載されている。

 米国はジョー・バイデン氏が新大統領に就任するや、前大統領の方針を180度転換。21年2月に地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議;COP21)に復帰した。バイデン氏は大統領候補時の公約に、50年のカーボンニュートラルを目指す長期目標を掲げていたため、そう遠くないうちに正式に宣言するとみられている。

 こうした中、日本は20年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。世界第3位の経済大国としては出遅れた感は否めないが、世界主要国からの批判を受ける前にギリギリ滑り込んだといったところだろう。