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再生可能エネルギー(再エネ)の導入が加速する一方で、課題となるのが再エネの電力を供給するための送配電網(パワーグリッド)の整備だ。カーボンニュートラルで普及が見込まれる再エネ利用を進める上で注目の送電技術、HVDC(高圧直流送電)について、日立ABB HVDCテクノロジーズ代表取締役会長兼CEOの西岡淳氏に聞いた。(聞き手は吉田 勝、高市 清治=日経クロステック/日経ものづくり、構成は小林 由美=facet)

 再エネの増加に伴い、パワーグリッドの仕組みが重要になってきています。世の中の再エネ投資が旺盛なのは間違いありません。パワーグリッドについては、2010年代頃から既に世の中で注目が高まっていたと感じています。日立グループとしても、そうした流れに対応して事業のポートフォリオを変化させてきていました。中でも大きな動きだったのが、三菱重工業と日立の火力発電事業を統合して2014年に設立した三菱日立パワーシステムズ(現三菱パワー)の三菱重工への全譲渡です。

 一方で、パワーグリッドの事業を日立グループにおける1つの中核事業として発展させるべく、新しいビジネスをスタートさせました。具体的には、ABBのパワーグリッド部門を買収し、スイスHitachi ABB Power Grids(日立ABB パワーグリッド社)として事業活動を始めました。再エネにおける大きな課題の1つに需給調整や電力系統の強化があり、その解決にはパワーグリッドの整備が不可欠だからです。

「Lumada」との連携に強み

 需給調整といったグリッドオートメーション、HVDC送電システムやパワー半導体といったグリッドインテグレーションなどを得意とする日立のパワーグリッド事業の中でも、高圧直流送電(HVDC)は、重要な技術の1つです。日立ABB HVDCテクノロジーズは、国内のHVDCを手掛けています。

 HVDCは、ABBの前身であるスウェーデンASEAが1929年に研究開発を始め、50年代に初めて商用化にこぎ着けました。そのころからABBは世界の半数以上のHVDCにかかわってきています。HVDCに関する高い技術力やグローバルでの強固な顧客基盤を持つABBの強さと、ITやOT(Operational Technology)、幅広い製品ポートフォリオを持つ日立の強さを融合させて事業強化していきます。

 例えば、日立のIoTプラットフォームである「LUMADA(ルマーダ)」とうまく組み合わせて、ABBとの協業時代以上の付加価値を顧客に提供できるのではないかと考えています。発電・送配電者などエネルギーの事業関連の従来顧客に加え、モビリティー、産業、IT、生活といったより広いカテゴリーの需要者を対象に、LUMADAを活用したエネルギーサービスを提供していく予定です。

 まずは産業向けデジタルソリューションをLUMADAから提供していきます。21年1月には日立ABBパワーグリッドの運用管理ソリューション「Digital Enterprise」をLUMADAに統合し、資産管理、データ分析、最適化などの機能提供を始めています。同年2月にはスマートデジタル変電所ソリューションもLUMADAから提供開始しており、予兆診断や故障予測が利用できます。今後は設備点検や検査サービス、ビジネスのマネジメントの合理化・簡素化のサービスと拡大していく計画です。