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「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」。三井不動産は2025年に向けたグループ長期経営方針の中でこんなスローガンを掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。IT部門のITイノベーション部を再編し、DX本部を新設してから2021年4月で丸1年。各事業部門の担当者とタッグを組んでオフィスビル、商業施設など多岐にわたる事業のデジタル化に取り組んできた。今回は商業施設事業での取り組みを紹介する。

 「広いのは魅力だが広すぎて回りきれない」「同行者に気兼ねしてしまい試着するのに罪悪感を覚える」――。三井不動産グループが手掛ける大型商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY」(千葉県船橋市)を利用する顧客のこうした声にこたえて三井不動産は2021年3月、ららぽーとTOKYO-BAYに子ども向けの遊び場やカフェを併設した試着ラウンジ「LaLaport CLOSET(ららぽーとクローゼット)」をオープンした。

三井不動産が2021年3月、ららぽーとTOKYO-BAYの中にオープンした試着ラウンジ「LaLaport CLOSET」
三井不動産が2021年3月、ららぽーとTOKYO-BAYの中にオープンした試着ラウンジ「LaLaport CLOSET」
(出所:三井不動産)
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 三井不動産が新たに設けたLaLaport CLOSETは、同社が実際の商業施設とEC(電子商取引)を組み合わせて新しい買い物体験を顧客に提供するオムニチャネル施策の1つだ。同社はこれまでもオムニチャネル施策を進めてきた。2017年11月、グループ会社が運営する商業施設と連携したECモール「Mitsui Shopping Park &mall(アンドモール)」を立ち上げた。2018年10月からは&mallで購入した商品を受け取ったり、その場で試着できたりする窓口「&mall DESK(アンドモールデスク)」を商業施設内に展開してきた。

 LaLaport CLOSETのプロジェクトは2019年10月、本格的に始動した。プロジェクトでは顧客を対象にしたオンラインによるインタビュー調査を実施。冒頭に挙げた顧客の声を踏まえてLaLaport CLOSETを作り上げた。LaLaport CLOSETも&mall DESKと同様に、&mallで購入した商品の受け取りや試着などができるが、顧客の声を踏まえて、顧客に新しい買い物体験を提供する場に進化させている。

 三井不動産の荒井みゆき商業施設本部&mall事業室統括は「より一層、リアルとデジタルを融合させることによってこれまでにない形で、顧客の利便性を高めることを目指して新設した」と説明する。

試着したい服をネットで予約

 LaLaport CLOSETの特徴の1つが試着サービスだ。顧客はLaLaport CLOSETの専用サイトから訪問日時と試着したい服などを予約。予約日時にららぽーとTOKYO-BAYにあるLaLaport CLOSETを訪問すると、予約した服を試着できる。アパレル関係のサイトでは「服を選んで購入する」のが一般的だが、LaLaport CLOSETの専用サイトは「試着したい服と日時を選ぶ」ようにしている点が特徴だ。

LaLaport CLOSETの専用サイト。試着したい服を、写真を見ながら選べるようにしている
LaLaport CLOSETの専用サイト。試着したい服を、写真を見ながら選べるようにしている
(出所:三井不動産)
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 服は専用サイト上に示されたさまざまなアパレルブランドの商品から複数選んで予約できる。新設当初は、女性や子ども向けの商品から選択できるようにしている。LaLaport CLOSETのスタッフは予約日時に合わせて試着室に服を用意して顧客を迎えている。

 顧客が訪問するLaLaport CLOSETという場についても、しつらえにさまざまな工夫を凝らす。「広すぎて回りきれない、試着をしたくても同行者に気兼ねをしてしまうといった(顧客の)大きな2つの悩みを払拭できるようにしている」と荒井統括は話す。

 「広すぎて回りきれない」という顧客の悩みを解決するため、LaLaport CLOSETの前面に人気ショップの洋服などを集めて展示する「ショールーミングショッピングゾーン」を設けた。「ららぽーとTOKYO-BAYのセレクトショップとしての機能も持たせることで、旬のファッションをこの場でつかめるようにしている」(荒井統括)。