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 米Microsoft(マイクロソフト)のクラウドの内側では、ハードウエアが目覚ましい進化を遂げている。代表格が「液浸サーバー」だ。マザーボード全体を液体冷媒の入った水槽に沈めることで、プロセッサーなどを冷却する。高密度サーバーを少ない電力で冷却できるだけでなく、サーバーの故障率を引き下げる効果が見込めるという。

 マイクロソフトは2021年3月に開催した自社イベントの「Microsoft Ignite 2021」で、米ワシントン州クインシーのデータセンターにおいて液浸サーバーの実運用を開始したことを明らかにした。具体的な冷却の流れを順を追って説明しよう。

マイクロソフトが開発した液浸サーバー
マイクロソフトが開発した液浸サーバー
出所:米マイクロソフト
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 液浸サーバーの内部を満たす液体冷媒は米3Mが開発したもので、沸点がセ氏50度(カ氏122度)と低い。そのためプロセッサーなどが発する熱によってすぐ沸騰する。この際の気化熱(液体が気体になる際に周囲から奪う熱)をサーバー冷却に使用することから、マイクロソフトはこの冷却手法を「二相液浸冷却(two-phase immersion cooling)」と呼んでいる。

ポンプを使わずに冷媒を循環

 気化した冷媒は蒸気となって上昇し、液浸サーバーの蓋の熱交換器によって液体に戻り、液浸サーバーのプールに雨のように降り注ぐ。このとき冷媒が持っていた熱がサーバー外部に排出される。

 特徴的なのは、液体冷媒の循環にファンやポンプを使用しない点だ。一般的な空冷方式や水冷方式では、空気や液体などの冷媒をファンやポンプを使ってサーバー外部に送り出す。それに対してマイクロソフトの液浸サーバーでは、液体冷媒は気化すると自然に上昇し、液体に戻ると重力に従って降り注ぐ。ファンやポンプなどに電力を使用しなくて済むため、冷却に必要な消費電力を従来型のサーバーに比べ5~15%削減できるという。

 液浸サーバーのメリットは消費電力の削減だけではない。空冷方式に比べて冷却効率が高いので、サーバーの密度を高められる。もう一つ、一般的な空冷方式に比べた場合の意外なメリットがある。サーバーの故障率を下げられる可能性があるのだ。

 マイクロソフトによれば、サーバーの故障には空気の湿度と酸素が大きな影響を与えているという。サーバーの内部を空気ではなく液体冷媒で満たすことによって、湿度の変動と無縁になり、酸素も排除できるため、サーバーの故障率が下がるというのだ。