独SAPのERP(統合基幹業務パッケージ)を導入している企業が最新版の「S/4HANA」へのアップグレードを遂行するため、どのように対応すべきか。今回は、構想策定での決定事項を踏まえて、子会社展開などのプロジェクトの計画立案と、要件定義以降のベンダー選定について説明する。
プロジェクト計画のタスク
構想策定で検討した業務要件やシステム構成などについて、グループ会社への展開方法を含めた計画を立て、コストを算出する。そして、経営層から次期基幹システムの開発・展開プロジェクト全体の承認を得る。
さらに、次の要件定義・開発フェーズへ進めるために自社の業務要件や課題、システム要件を記載したRFP(提案依頼書)を作成する。このRFPをITベンダー各社に提示して提案を依頼し、ベンダーを選定する。
プロジェクト計画では、これまでに検討したTo Be業務要件やシステム構成図、解決したい課題やシステム導入スケジュールなどを実行するためのビジョン、スコープ、目標、アプローチ、推進体制などを取りまとめる。
グループ企業への導入・展開を計画する場合は、要件定義・開発はテンプレート化し、完成したテンプレートをグループ企業へ展開する形になる。その際、どのような順序で展開するかを決める必要がある。複数回に分けて順次展開したり、業種・地域の単位でグルーピングしたりといった具合に、経営上の優先順位を考慮して順序を決める。
IT部門が主導すべきだ
推進体制については、構想策定段階までは業務側の要件検討が主だった。この先は、システム開発における検討・確認事項がメインとなる。プロジェクト体制はIT部門が主体となって構築し、業務部門のメンバーは適宜検討チームの会議に参加してもらう形態がいいだろう。
プロジェクト計画が固まったところで、プロジェクトの総コストを算出する。ここでは、ベンダー側のコスト(工数・金額)に加え、自社やグループ会社、IT子会社のコスト(参画必要工数など)も概算で見積もるべきだ。こうすることで、社内からプロジェクトへ要員を出してもらう際の説明がしやすくなる。
筆者の経験上、プロジェクトを実施する立場の人は、外部ベンダーへの支出をプロジェクト総コストの中心だと思い込みがちだ。一方で経営陣は、内部コスト・外部コストを含む総コストをプロジェクトコストであると捉え、説明を求めてくる。
費用対効果の算定は、定性・定量の両面から検討すべきである。定量的な数値については、初年度から次のバージョンアップまでを考慮した期間における費用対効果を検討する。そのうえで、これらのプロジェクト計画全体を取りまとめて経営陣に上申し、承認を得る。