新型コロナウイルス禍で、我々が1つ学んだことがあるとすれば、それは感染症の迅速な診断分析がいかに重要であるかということである。迅速な診断が可能になれば、感染症の広がりを抑制し、タイムリーな治療を実施できるからだ。感染症の診断分析においては、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使った分子診断またはDNAベースの検出が絶対的基準になっている。このとき、高感度の検出ができることが重要である。微量のサンプルで病原体が検知できれば、感染を迅速に追跡できるからだ。
だが、残念なことに、DNAを抽出し、増幅する現在のシーケンシング過程では、試薬の追加と洗浄に複雑な工程があり、時間がかかる。そこで注目されるのが、装置を小型にし、検査を迅速化できるマイクロ流体だ。マイクロ流体は微小電極チップにより、一滴の血液や、さらにそれよりもごく微量な液体を分析できる。加えて、「チップ上の研究所」と呼ばれるように、単一チップ上だけで多様な実験の工程を可能にする。研究所のワークフローを、マイクロ流体技術を使って最小限にすることで、数時間を必要としていたハイスループットな診断テストの工程が、わずか数分に短縮できる。
これまでもマイクロ流体構造を開発する場合、従来シリコン(Si)がその素材として選ばれてきた。安定供給ができて信頼性があるなど、他の素材と比べて多くの利点があるためだ。Siの優れた特性と、高度に進んだSi産業により、微小共振器やマイクロチャネル、バルブやポンプなどの複雑な機能をより精巧にできる。現時点においてもSiは、マイクロ流体コンポーネントの寸法を縮小し、それらを電気的機能およびセンシング手法と組み合わせるための最良の選択肢である。
マイクロ流体R&DチームリーダーのChengxun Liu氏に、imecのSiマイクロ流体プログラムが、サンプル分離からシ―ケンシングまでのDNAベースの試験過程をいかに迅速化するかについて語ってもらった。