全2354文字
PR
(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]

2015年から6年間、東京大学総長として「大学が社会変革を駆動する」ことを標榜し、産学連携など大胆な大学改革を次々と打ち出した五神真氏。米IBMと連携し、IBMの量子コンピューターの導入を決めるなど、量子人材の育成にも力を入れる。総長を退任したばかりの五神氏に狙いを聞いた。(聞き手=久保田 龍之介、中道 理)

東大は19年に米IBMと連携し、IBMの量子コンピューター「IBM Q System One」の導入を決めました。

 日本で量子技術を扱う人材を前倒しで育てたいというのが一番の思いでした。私が総長になった2015年ごろ、量子コンピューターを一般的に使うのは、どんなに早くても2030年ごろと考えていました。しかし2018年から2019年にかけてIBMや米Googleが、特定の計算課題ではありますが、今のコンピューターより本当に速いかどうかを議論できるレベルの量子コンピューターを発表し、事態が急展開しました。

 これまで日本は、量子ビット(Qビット)の開発に力を入れていました。超伝導素子による量子ビットの提唱者である東大の中村泰信教授のグループを皆で応援している状況です。しかし世界では、量子コンピューターを作り、量子アルゴリズムを実行するプログラムを動かして多様な難問を解くべく使いこなすことがポイントになりつつあります。コンパイラーの開発など、量子ビット開発の先の競争が始まっている。そこで私は未完成でも、日本においても動く実機の導入を急ぐべきと考え、IBMと連携することを決めたのです。

 今回、2台の実機を日本に置くことにしました。1台は、日本が専用的に使う最新鋭機器を新川崎のIBMに置きます。もう1台は、型としては数年前のものですが、実際に中身を触って量子ビットの周辺も含めたハード研究を行える実機を東大キャンパス内に設置するのです。後者はIBMとしても初めてで、今回の連携の特徴です。リアルなものが動いているのを学生に見せることは、教育上も大変大きなインパクトを与えられると考えています。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]