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(撮影:加藤 康)
(撮影:加藤 康)
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2020年度第4四半期に量子暗号通信の事業を開始した東芝。同社の量子暗号通信装置は、他社製品を上回る性能を持ち、国内外で数多くの実証に参加する。東芝はどのように量子暗号通信市場を攻略する考えなのか。同事業を統括する東芝デジタルソリューションズ 社長で東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者の島田太郎氏に聞いた。

量子暗号通信の事業を本格的に開始しました。

 まずは量子暗号通信装置を使いたい企業や団体向けに、システムを構築する事業がメインになります。インフラを構築するパートナーやエンドユーザーなどを含めると、国内外で50社以上と商談を進めています。

 量子暗号通信のマーケットは今後5~10年で爆発的に大きくなるとみています。市場の25%を獲得することを目指しています。

 ただ我々は量子暗号通信一本だけで勝負しようとは思っていません。量子コンピューターや人工知能(AI)、さらには膨大なデータを集めるという全体戦略の一部として、量子暗号通信を捉えています。

具体的にはどういうことでしょうか?

 量子関連技術のビジネスを預かっている私の感覚からすると、量子コンピューターはこれまで難しかった動的な問題を解決できる、とんでもないマシンになります。動的な問題とは、状況に応じて答えが変わる電力の最適配分や輸送といった問題です。量子コンピューターは膨大なデータを扱うことで、こうした動的問題の最適解を見つけ出すことに長けています。

 ここで大事になるのは、このような動的な問題を解くための膨大な量のデータをどのように集め、運んでくるのかという観点です。医療や物流など新たな産業でリアルタイムにデータが集まる状況を作る必要があります。そのための手段の1つとして量子暗号通信を捉えています。

現在ネットの世界では、GAFAを中心とした巨大ITがデータを独占しています。

 GAFAは基本的にスマホやPCなどサイバー空間からデータを集めることで成功しました。これをDX(Digital Transformation) 1.0としましょう。サイバー空間上に存在するデータは、世界全体のデータの約2割に過ぎません。残りの8割はサイバー空間の外にあります。これをDX 2.0とすると、DX 1.0よりも4~5倍も大きなポテンシャルがあります。

 これらのデータは徐々に量子に置き換わり、最終的にはQX(Quantum Transformation)とも言うべき変化が起こるでしょう。量子コンピューターで解くためのデータは、量子ビットとして持っていたほうが、都合がよくなります。現在の通信や計算の仕組みが根本から入れ替わるような変化が訪れます。