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 スズキは、2021年度通期(21年4月~22年3月)の事業計画の公表を見送った。新型コロナウイルス変異株(インド変異株)の感染拡大や、エンジンの触媒に使う貴金属(ロジウム)などの原材料高騰が原因である。

 21年5月13日にオンラインで開催した20年度通期の(20年4月~21年3月)連結決算会見において、同社社長の鈴木俊宏氏は、「現時点で21年度通期の業績を予想することはできない」と述べ、合理的な算出が可能になり次第、速やかに発表するとした(図1)。

鈴木俊宏氏
図1 スズキ社長の鈴木俊宏氏
(オンライン会見の画面をキャプチャー)
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 インドでは現在、変異株の感染が急速に進んでいる。重症感染者の増加によって医療用酸素の供給がひっ迫したことで、現地の自動車メーカーなどの製造業はインド政府の要請に応じて、自社工場で使う工業用酸素を医療機関に提供している。

 その結果、インドにあるスズキの3工場は操業停止を余儀なくされている。ロックダウン(都市封鎖)によって、インド国内にある販売店の8割は営業できない状況にある。

 こうした状況を受けて鈴木氏は、「(5月1日から停止している)工場の操業を5月17日に再開する方向で準備を進めているが、今後の感染状況によっては延期せざるを得なくなるかもしれない」と明かす。

 スズキにとってインドは、日本に次ぐ重要な市場である。20年度通期の実績でみると、同社の世界販売台数の約50%、総売上高の約30%をインドが占める。ただ、新型コロナ禍によって、同国での20年度の販売は大きく落ち込み、業績も悪化した(図2)。

インドの販売台数
図2 インドの販売台数(20年度実績)
(出所:スズキ)
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 特定の地域を重視する海外展開にはリスクが伴う。リスク回避のために、「インドに次ぐ成長市場を早期に育てる必要がある」と、同社は以前から指摘されてきた。今回の変異株の感染拡大は、インド重視のリスクを顕在化させたといえる。

 こうした指摘に対して鈴木氏は、「新たな市場に進出することにも、大きなリスクが伴う。現状では、既存の市場において着実に事業を展開することが重要だ」と述べ、市場の分散によるリスク回避には、長期的な視点で取り組む姿勢を示した。

 21年度に関する事業リスクには、車載半導体不足の問題もある。半導体不足の影響を受けてスズキは21年4月に、国内の3工場で合計約1万台の減産を行った。同年5月にも、一部の工場で減産を実施した。

 今後の状況について鈴木氏は、「現在、半導体不足の影響を正確に把握できる状況にはない。影響は長期化する可能性が大きい。今後の需給状況を注視し、適切に対応していく」と述べるにとどめた。