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 マイナンバーカードを健康保険証として利用できる、厚生労働省の「オンライン資格確認」システム。約3万件に上るマイナンバーの入力ミスのほか、2021年3月からのプレ運用でも複数のトラブルが明らかになり、同月末からの本格運用を約半年後に延期している。

 このように足元ではクリアすべき課題を複数抱えているが、医療現場は必ずしも同システムへの批判一色ではない。同システムが軌道に乗り、厚労省が本来描いていた同システムの意義が具現化することに期待する見方もある。同システムが普及した未来に、日本の医療システムや医療現場、国民にはどのような変化が訪れるのか。

 20XX年、Aさんが初めて訪れた医療機関でマイナンバーカードをかざすと、生まれてからこれまでの全ての既往歴や服薬履歴が画面に表示される。医師はあたかもAさんを生まれたときから診ている「かかりつけ医」かのように「Aさんは生まれたときは未熟児で、子供の頃にはこの薬にアレルギーがありましたね」と確認して、診察を始めた――。

医療機関の受付に設置された顔認証付きカードリーダー。オンライン資格確認のための本⼈確認と医療機関との情報共有への同意取得を実施する
医療機関の受付に設置された顔認証付きカードリーダー。オンライン資格確認のための本⼈確認と医療機関との情報共有への同意取得を実施する
(出所:ハマダ眼科)
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 オンライン資格確認ができるようになると、将来的に薬剤情報のほか、過去の健診・検診結果や手術歴、医療費などの情報を政府が運営する「マイナポータル」で閲覧可能になる。本人が同意すれば、その情報を医療機関で医師らが閲覧し、治療に役立てることもできる。

 マイナポータルに個人の薬剤情報や健診情報などを集約するオンライン資格確認のシステムは、国民一人ひとりの医療保険情報を同システムにひも付ける仕組みが背景にある。これによって、転職などで加入する健康保険組合などの保険者が変わっても履歴が消えることなく、自身の情報を集約できるわけだ。

 ファーストリテイリング(FR)の健保組合であるFR健康保険組合の奥村芳弘常務理事は、医療データの現状について「現在は企業ごとに健保組合があり、被保険者の健診結果などの情報を各健保組合などがばらばらに保持している状態だ」と指摘する。オンライン資格確認が実現すれば「小学校や社会人、後期高齢者などそれぞれのライフステージで取得する健康診断などの情報がシームレスにつながる。そうしてつながった医療データの活用が進めば、生活習慣改善などの動機付けがしやすくなる」(同)と期待を込める。生活習慣の改善を通じて被保険者の病気リスクが減れば、被保険者本人はもとより健保組合などの保険者が支払う保険料も下がる。