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 利用者のネット上の行動を基に趣味や嗜好を推測し、ネット広告を出し分ける技術である「サードパーティークッキー」。その代替技術の候補は米Google(グーグル)の「FLoC(フロック)」だけではない。

 有力候補の1つが「Unified ID(UID) 2.0」。アド(広告)テクノロジー企業の米The Trade Desk(ザ・トレードデスク)が開発を主導する、オープンソースの共通ID技術である。同社のほかフランスCriteo(クリテオ)などのアドテク企業やメディア企業が参加している。

メアドのID化に高いハードル

 UID2.0の基本的な仕組みは、利用者のメールアドレスを基に生成した利用者識別子をサードパーティークッキーの代わりにしようというものだ。

 UID2.0を採用したWebサイトを訪れると、メールアドレスを入力してログインするよう求められる。同サイト側でメールアドレスからハッシュ値を計算し、識別子を生成。UID2.0を導入しているWebサイトは同識別子を共有し、ターゲティング広告の配信やシングルサインオン機能の提供などに利用する。

「Unified ID(UID) 2.0」の実装例
「Unified ID(UID) 2.0」の実装例
(出所:仏クリテオ)
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 ザ・トレードデスクによれば識別子は定期的に再生成される。利用者は自分のデータをどう使われるかを自ら設定できる。同社は「消費者が運転席に座るようなもの」と説明する。

 オープンソースを採用し、プライバシーの制御権を利用者に委ねるとするUID2.0が理想通りに機能すれば、サードパーティークッキーに代わる業界標準となる可能性はある。ただ、利用者自身にメールアドレスを入力させるのは難しいと言わざるを得ない。

 大手メディアサイトはまだしも、中小メディアサイトの場合はよりハードルが高くなる。また、ハッシュ化しているとはいえ、メールアドレスに基づく情報を多数のWebサイトで共有されることに抵抗を感じる利用者もいるだろう。

 ザ・トレードデスクもこれらの難点を認めている。実用化に向けては利点を分かりやすく示すとともに、メールアドレスの入力と共有という2つのハードルを越えるサービス設計が欠かせない。

「正面から堂々と同意取得を」

 脱サードパーティークッキーを見据え、個々のアドテク企業も顧客の支援や対応技術の開発を急いでいる。中小企業のネット販促を支援するリスティングプラス(東京・新宿)は、サードパーティークッキー廃止後の影響分析や新たなネット販促システムづくりなどを支援している。

 具体的にはLINEアプリへの登録を促したりセミナーの告知内容を充実させたりするためのWebサイト構築を支援している。顧客企業が自社のWebサイトを通じて消費者の情報を直接集められるようにするのが狙いだ。

 「サードパーティークッキーが廃止されても、自社サイトが発行するファーストパーティークッキーは引き続き使える。これからは消費者の同意を得たうえでのターゲティングに、企業は注力すべきだ」。同社の長橋真吾社長はこう訴える。

 サイト訪問者からいちいち同意を取り付けるのは、一見すると遠回りで非効率な手法だ。これに対し長橋社長は「ネット広告のあるべき姿に近づける」とする。

 同意したうえであれば、より利用者の意向に沿った広告コンテンツを配信できる可能性が高まる。「今までは大量の広告宣伝費を投じて多くの広告を配信する大企業ほど、クッキー情報をたくさん集めていた。これからは好ましいコンテンツを提供できる企業が強くなる」(同)。