全3758文字
PR

 日本のネット広告市場の「透明化」に向けて、法規制の網がかかる。政府は巨大IT企業を規制する法律にネット広告分野を追加し、取引内容を第三者が計測できるようにするなどネット広告事業者へのルール整備を進める方針だ。

 米Google(グーグル)をはじめとする、ネット広告市場で支配的な地位にある巨大ITプラットフォーマーを規制する狙いがある。規制されるネット広告業界は困惑を表明し、自主規制を訴える。

 「サービスは無料で、でもターゲティングは嫌」。相反する消費者ニーズを内包するネット広告を浄化する道のりは平たんではない。

「透明化法」でネット広告を規制へ

 デジタル市場を巡る様々な課題が凝縮されている――。政府のデジタル市場競争会議は2021年4月27日に公表した最終報告書案で、ネット広告市場をこう評した。

 競争激化や取引の不透明性、データ囲い込み、サービスや情報の質の低下、プライバシー軽視。ネットやスマートフォンを介したデジタルサービスがもたらす弊害を、ネット広告市場は全て備えているとして、同市場への規制を「デジタル市場のルール整備のあり方を考える試金石」と位置付けた。

ネット広告業界の問題点
ネット広告業界の問題点
[画像のクリックで拡大表示]

 同会議は是正すべきネット広告業界の課題を5種類に整理した。中でもネット広告特有と言えるのが広告の透明性に関する課題だ。

デジタル市場競争会議がとりまとめたネット広告市場の課題と解決方針
(出所:内閣官房)
課題内容解決方針の例
透明性アドフラウドなどデジタル広告の質に関する説明責任徹底、第三者測定ツールの接続条件の開示・関係者向け情報の内容や取得方法の分かりやすい開示
・政府によるモニタリング
・効果測定ツールを接続するシステム改修や接続できない場合の理由開示
データの囲い込みの懸念オーディエンスデータの取得や使用条件の開示・オーディエンスデータ取得の可否、取得方法や内容の開示
・問い合わせ対応窓口の設置
・政府によるモニタリング
利益相反・自社優遇の懸念「利益相反・自社優遇管理方針」の策定や開示・プラットフォーム事業者が広告主やパブリッシャーから取得するデータの内容や使⽤範囲の開示
・利益相反や⾃社優遇の恐れのある取引の特定、管理方針の策定と公表・政府によるモニタリング
手続きの公正性システム・ルール変更の事前通知や理由説明、取引先の活動制約、取引拒絶に関する理由説明課題・システムやルールの変更や取引拒否の内容と理由の事前開示
・苦情や問い合わせ対応の手続きや体制の整備
・政府によるモニタリング
パーソナルデータへの懸念パーソナルデータの取り扱いに関する分かりやすい開示・2021年秋見直し予定の「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」における対応
・大規模プラットフォーム事業者へのモニタリング
・ネット広告の業界団体のガイドライン策定の促進

 その課題を列挙すると、クリック数の水増しなどで広告収入を不正に取得する「アドフラウド」や、広告主のブランド価値を損ねかねない種類のサイトに広告を表示する「ブランドセーフティー」、広告が視聴者の目にとまらない「ビューアビリティー」などがある。広告の品質に関わる説明責任をネット広告事業者が十分に果たしていない、と同会議は指摘する。

 具体的な是正策として、例えばアドフラウド対策だけでも複数挙げる。例えば広告主が取得できる情報を充実させたり、情報を容易に取得できるようにしたりする方策の整備を求める。

 加えて、第三者による広告効果のモニタリングも可能にすることを求める。広告の表示回数や視認可能になった回数、クリック数といった広告効果を客観的に測れるようにするため、第三者が測定ツールをネット広告システムに接続するためのアクセスポイントや接続条件、接続できない場合の理由の開示も求める。