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ここ半年ほど、「半導体が調達できず、自動車の生産をストップしている」という発表や報道が相次いでいる。しかもそれは自動車業界にとどまらず、多くの産業に影響を及ぼしそうな勢いとなり、さまざまな業界における関心事になりつつある。そこで日経クロステックは、これから発表のピークを迎える各社の決算報告のタイミングに合わせて、「半導体不足」がまだピンとこない人に向けて超解説する。

 なぜ半導体が不足しているのか。どうして自動車メーカーはクルマを造れなくなっているのか。それはいつまで続くのか――。こうした疑問を丁寧にひもといていくのが、今回の超解説「半導体不足」です。専門用語を極力使わず、状況が一目で分かる4コマ漫画と、5つの素朴なQ&Aで構成しました。

「半導体不足でクルマが造れないワケ」
「半導体不足でクルマが造れないワケ」
こちらの4コマ漫画は右上→右下→左上→左下のN型パターンでお読みください。(イラスト:ヤミクモ)
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Q1(Why):そもそも半導体が足りなくなった理由は?

 半導体不足も、新型コロナ禍で起こったマスク不足やトイレットペーパー不足も、根本は同じです。「モノ不足」は、買いたい人が多いのに、市場に流通する量が少ないときに起こります。マスク不足は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大初期に、マスクを買い求める人が急に増えた一方で、生産や物流が追いつかなかったために起こりました。

 現在の半導体不足も、半導体を買いたい会社は多いのに、市場に流通している量が少ないために起こっています。買いたくても買えないのです。半導体は、スマートフォンやPCなどの個人用端末からデータセンターや5G(第5世代移動通信システム)基地局などのインフラに至るまでさまざまなデジタル機器で大量に使われていて、その需要は増え続けています。近年はデジタル化の取り組みが社会全体に広がり、デジタル化に必要不可欠な半導体の需要をさらに押し上げています。

 このように旺盛な半導体の需要が、その供給・流通量を上回る傾向にあり、半導体が不足しやすい状況になっています。

Q2(Who):自動車業界が一番大変なのはなぜ?

 自動車用の半導体の流通量が減っていた状況で突然、自動車メーカーからの半導体の注文が急増したためです。

 なぜ、自動車用の半導体の流通量が減っていたのでしょうか。原因は、2020年に深刻化したコロナ禍にあります。COVID-19の拡大によって、自動車の需要が落ち込むという予測が広がったことで、半導体メーカーは自動車用の製品を減産していたのです。半導体メーカーとしては、売り上げは減ってしまいますが、売れない製品を造っても仕方ありません。自動車以外の顧客から注文を取ったり、別の半導体製品の生産に切り替えたりして、穴を埋めることになりました。

 ところが、異変が訪れます。世界最大の自動車市場である中国の需要が、予想以上のスピードで回復し始めたのです。V字回復すると見込んだ自動車メーカーは半導体メーカーに大規模な注文を打診しました。しかし、半導体メーカーは額面通りに受け取らず、増産規模を控えめにしたようです。既に自動車用ではない別の製品の生産に切り替えたために、再度の自動車メーカーからの注文に応えられないというケースもありました。さらにタイミング悪く、2021年2月には大寒波が米国テキサス州を襲ったり、同年3月にはルネサス エレクトロニクスの主力工場で火災が発生したりして、半導体工場の稼働停止も相次ぎました。

 これらの結果、自動車用の半導体は供給不足に陥りました。多くの自動車メーカーが必要な半導体を調達できず、自動車を造りたくても造れない事態に陥っています。半導体は自動車にとって欠かせない重要な部品です。車載エアコンやオーディオといった電気機器だけでなく、エンジンやトランスミッションなど「走る・曲がる・止まる」というクルマ本来の機能についても半導体を使って制御しています。半導体がなければ、もはや自動車を造ることはできません。

 半導体を調達できず十分な在庫も持っていない自動車メーカーは、生産計画の見直しを余儀なくされ、業績への影響も懸念されるなど、打撃を受けています。

Q3(How):増産すればいいのに、どうしてできない?

 自動車メーカーからの注文が殺到しているのですから、今すぐ自動車用の半導体を大増産すれば飛ぶように売れて、半導体メーカーは大もうけできそうです。自動車の半導体不足も解消されます。なぜ、そうなっていないのでしょうか。それには、大きく3つの理由があります。