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 例えば「通信環境の問題は大きい」と教育ICTに詳しい野本竜哉・一般社団法人iOSコンソーシアム代表理事は指摘する。校内LANはGIGAスクール構想の補助対象だが、学校外に出る通信回線については当初、補助対象外だった。通信回線を地域のデータセンターに集約するセンター集約型を採用する自治体も多く、アクセスが集中すると通信速度が低下するなどの問題が生じる。

教員向けの1人1台の学習用端末は配備されないことも

 また「教員向けには1人1台の学習用端末を配布できていない点も問題だ」と小宮山座長は言う。教員は校務用のパソコンは持っているが、児童・生徒が持っている端末とは別物だ。GIGAスクール構想において教員向けの端末は補助対象になっていない。端末を持たない教員は子どもたちが使っている端末の使い勝手が分からないままICTを活用した授業を進めることになる。

 全国ICT教育首長協議会会長を務める横尾俊彦・佐賀県多久市長は「端末を活用した授業を進める上で、教員に学習用端末を使う技術がなかったり端末を使った授業の進め方が分からなかったりすることがボトルネックの1つになっている」と指摘する。

 文科省はICTを使った授業の進め方などを実務的に支援する「ICT支援員」について2022年度までに4校につき1人を配置する方針だ。各自治体も教員向けの研修を進めるが、「進んでいる自治体とそうでない自治体の格差が大きい」と情報通信総合研究所の平井聡一郎特別研究員は指摘する。

 激務といわれる教員の働き方改革も欠かせない。「ICTを活用した新しい授業を教員自身が工夫し取り入れるには、教員の働き方改革を同時に進めることが不可欠。ここでもITの活用が期待される」(野本代表理事)。

セキュリティー対策を含めたデータ活用のグランドデザインを

 さらに「ソフトウエアに対する支援が手薄になった面がある」と小宮山座長は指摘する。GIGAスクール構想の補助対象にソフトウエアは含まれておらず、自治体の教育予算から配分するが、新型コロナ禍での経済支援などでソフトウエアに対する支援が切り詰められた面があったという。端末を学習や授業で使いこなすには、ソフトウエアに対する支援も重要だ。

 高校にも1人1台の学習用端末の配備が急がれる。萩生田光一文科相は高校でも1人1台端末の実現を目指す方針を示しており、2020年度第3次補正予算では低所得世帯などの高校生に向けたICT端末を整備する予算が配分された。

 ICTを使って個別最適化し、学校と学校外での学習をシームレスでつなぐために、データの利活用は不可欠だ。「サイバーセキュリティー対策の観点も含めて、学習データ活用のグランドデザインと目的・原則の明確化を早急に進めるべきだ」と小宮山座長は語る。