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 新型コロナウイルスの感染拡大で2021年4月25日から東京都など4都府県に緊急事態宣言が再度発令された。同年5月12日、緊急事態宣言は5月31日まで延長され、対象は6都府県に拡大した。「また小学校や中学校が一斉休校し、子どもは在宅学習をするのか」。そう思った人は多いだろう。

 今回、臨時一斉休校はなかったものの、仮にそうなったとしてもその様相は変わっていたはずだ。政府が進める「GIGAスクール構想」によってほぼ全国の小中学生に1人1台の端末が配られたからだ。オンライン授業もICTを活用した学習もこれで実現できる――。

 2021年4月19日、大阪市の松井一郎市長は、政府の緊急事態宣言が発令された場合は市内の小中学校を原則オンライン授業に切り替える意向を示した。GIGAスクール構想で3月末までに市内の小中学校に1人1台の端末の配備を終えたことが理由だ。5月14日時点では自宅でのオンライン学習も取り入れている。

 ただし、オンライン学習については「一部の時間帯」という条件付きだ。市内の学校が同時にインターネットにつなげると通信回線に負荷がかかりすぎるためだ。負荷を分散するため地域ごとに双方向通信を行う日時を分けているという。

 端末は整備されたものの、それを活用するネットワークや、ICTを活用した授業をするための支援が間に合っていない。そんな状況が浮かび上がってきた。

97.6%の自治体で2021年3月末までに1人1台を配備完了

 2021年3月17日、文部科学省は2021年3月末までにおよそ97.6%の自治体で、生徒の手元に端末が渡りインターネットの整備を含めて学校での利用が可能な状態になる見込みだと発表した。

2021年3月、97.6%の自治体で2021年3月末までに端末の配備完了と発表 
2021年3月、97.6%の自治体で2021年3月末までに端末の配備完了と発表 
(出所:文部科学省)
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 政府がGIGAスクール構想を最初に発表した2019年12月の段階では2024年3月末までの「1人1台」実現を目指していたが、新型コロナ感染拡大を受けて目標を3年前倒しした。「4年間で整備する計画が1年弱での整備になった。急ピッチで進めなくてはいけない中、学校設置者(市区町村など)や各学校が努力し、民間企業も協力してくれた結果だとまずは受け止めている」と文科省初等中等教育局情報教育・外国語教育課の今井裕一課長は話す。

 しかし端末が渡ったところで、校内でICTを活用した授業がすぐに可能になるわけではない。ましてや端末を自宅に持ち帰った上でのオンライン学習になるとさらにハードルが上がる。児童・生徒の家庭で通信環境が整っているかどうかという問題も加わるからだ。

通信環境など課題は山積

 「1人1台の配備がほぼ完了したことでGIGAスクール構想はスタート地点に立った。ハードがなければソフトウエアの整備もデータの利活用も進まない」。経団連イノベーション委員会エドテック戦略検討会の座長を務める小宮山利恵子スタディサプリ教育AI研究所所長はこう話す。ただしこう釘をさす。「1人1台配備が終われば目標を達成したと勘違いしないことが重要だ」(同)。

 経団連は2021年3月16日、「Society 5.0時代の学びⅡ」と題する提言を発表した。提言の中で「学びのDX(デジタルトランスフォーメーション)のロードマップ」を示した。まず導入してみることをステップ1として、データの利活用を進めて学校内外での学びを個別最適化し、シームレスにつないで自律的な学びを実現することをステップ3とする。

経団連は「学びのDXのロードマップ」を提言する
経団連は「学びのDXのロードマップ」を提言する
(出所:経団連「Society 5.0時代の学びⅡ)
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 文科省が掲げる「子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現」に向けて課題は山積している。