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 コロナ禍2度目の新年度が始まり、各社は新入社員を迎え入れた。

 2020年4月、初の緊急事態宣言の発令により多くの企業が新人研修の方向転換を迫られ、慣れない状況で密回避やオンライン化などの対応を試行錯誤した。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置がいまだに取られている21年に実施された新人研修は、昨年の教訓を糧に、どのような進化を遂げているのか。

 コロナ禍への対策として「完全オンライン」で新人研修を20年に実施した凸版印刷を再度取材した。VR(仮想現実)をフル活用して21年のプログラムに生かしている。20年の研修で生じた課題を解消したのにも、VRが役立った。

バーチャル空間に研修センターを再現

 凸版印刷では21年4月1~23日までおよそ3週間の研修で、新入社員が出社することは一度もなかった。

 20年には既に完全オンライン研修を達成していたが、人事労政本部の巽庸一朗人財開発センター長によると、21年の研修は昨年の「進化版」にできたという。進化版とは、オンラインの環境にあってもより現実感が高められるVRを活用した研修内容を指す。

 21年の新入社員研修の目玉は「トッパンVRオンライン研修センター」(以下、VRオンライン研修センター)だ。新入社員は自宅にいながらデジタル端末を使用してVR空間に再現したデジタルオフィスへ「出社」、日々研修を受ける形となった。

 VRオンライン研修センターは4エリアを擁し、それぞれが凸版印刷本社の実在の施設を再現している。「トッパンエントランス」「トッパンVRホール」「トッパンVRアカデミー」「トッパンHRモール」がそれだ。

 トッパンエントランスは本社ビル1階を再現しており、施設案内を見たり、実際に展示されている、障がいを持つアーティストの作品を鑑賞したりできる。トッパンVRホールは本社敷地にある音楽ホール「トッパンホール」を再現する。ここでは同社の歴史や印刷技術を学ぶ動画コンテンツを視聴できる。トッパンVRアカデミーでは本社敷地内の「印刷博物館」でVR技術やデジタルアーカイブの取り組みに関する動画コンテンツを視聴できる。

本社ビル1階を再現した「トッパンエントランス」で新入社員を迎え入れる先輩社員の様子
本社ビル1階を再現した「トッパンエントランス」で新入社員を迎え入れる先輩社員の様子
(出所:凸版印刷)
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トッパンエントランスを進むと会社に関する案内やアート作品が両側に現れる。クリックで詳細を確認できる
トッパンエントランスを進むと会社に関する案内やアート作品が両側に現れる。クリックで詳細を確認できる
(出所:凸版印刷)
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 研修受講の入り口になるのはトッパンHRモールだ。本社ビル15階を再現しており、研修で使うeラーニングのWebサイトへはここから移動する。巽人財開発センター長は、入り口を実際のビルに模した理由を「自宅にいながらも出社体験ができるよう工夫した」と話す。

 実際の場所を再現しただけでなく、VRの利点を生かし出社体験をよりリアルに近づけるための工夫もある。

 VRオンライン研修センターの始動にあたり、新入社員には同社の製品である紙製ヘッドマウントディスプレー「VRscope」を配布した。VRscopeはA4サイズの紙を組み立て、スマートフォンを差し込むことで簡易的なヘッドマウントディスプレーとして機能する。VRオンライン研修センターはPC画面で見ることもできるが、巽人財開発センター長はVRscopeを使うことで「加速度センサーが稼働するため没入感が全く違う」と強調する。

新入社員に配布した「VRscope」。A4サイズの用紙から道具を使わず組み立てられる
新入社員に配布した「VRscope」。A4サイズの用紙から道具を使わず組み立てられる
(撮影:日経クロステック)
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