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 新型コロナ禍により働き方が激変して2年目、2021年は大手IT企業が新入社員研修の形を変えつつある。NTTデータ、富士通、日立製作所では研修のアップデートを図っている。

 各社共にオンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式の研修だ。それぞれが工夫して、コロナ禍の状況や仕事を取り巻く最新の環境を考慮した特徴ある研修内容になっている。キーワードは「Z世代」「ジョブ型雇用を前提としたキャリア形成」だ。

IT企業3社の2021年度新入社員研修概要
社名スケジュール対象人数形式内容
NTTデータ2021年4月1日~5月20日505人オンライン/オフライン「Z世代」を意識した内容で個別化を図る。自習を組み込み、プログラミング言語やクラウド技術に関する演習科目を選択できる
富士通2021年4月1日~16日1558人オンライン/オフライン。グループ会社と合同で実施。4月19日以降は職種別研修へ移行ジョブ型制度を見据え、キャリア形成の意識を持つため「自律」を目的としたカリキュラム構成に。eラーニングの科目は選択制を採用
日立製作所2021年4月1日~6月30日600人オンライン/オフライン。日立製作所全体で600人。うちITセクターの人数は非開示同社初となるデータサイエンティストのジョブ限定採用の新卒社員が入社。「ものづくり実習」などの研修内容を特別に組み立てる
(作成:日経クロステック)

個別学習で「Z世代」に最適化

 「Z世代」と呼ばれる1990年代後半以降に生まれた、個性や自分らしさを重視するとされる世代が社会人としての人生へ踏み出し始めている。デジタルになじみ、幼少時から使いこなしてきた世代だ。

 こうした世代の特徴を捉えて研修を最適化したのがNTTデータだ。NTTデータは詰め込み型の集合研修から脱却しつつあり、新入社員一人ひとりに適した内容を個別に学習を進める研修へと姿を変えている。例えば何を勉強するかを自らが考える「自習タイム」や、高いITリテラシーを持つ新入社員に向け、プログラミング言語のPythonやクラウドサービスのAWSを学べる選択科目を用意する。

 NTTデータ人事本部人事統括部人財開発担当の上笹遼主任は「Z世代はパーソナライズされたコンテンツが当たり前だと感じる世代だ。2019年ころから一律の研修提供が難しくなるだろうと予期していた」と話す。全員に一律の内容を学ばせるよりも、それぞれに合ったメニューで学んでもらった方が学習効果は高いと判断したわけだ。

 自習タイムなど一部メニューは20年から取り入れていた。だが緊急事態宣言下で企業を取り巻く状況がめまぐるしく変わったため、臨機応援に研修科目を組み替える中で生じた隙間時間を埋める意味合いが強かった。Z世代に適した内容として本格的に導入したのは21年からだ。

進行度に差が出ない環境を準備

 パーソナライズされた研修内容とする半面、スキルによって各自の進行度に差が出ることを防ぐため、21年は研修時に利用する演習環境「仮想OS演習環境」をAWS上に用意した。

 理由は、20年の研修から得た教訓だ。このときは、新入社員それぞれのパソコンのローカル環境に、演習用のJava実行環境を新入社員が自ら構築するという実習があったが、経験の少なさからスムーズに進められない社員もいた。リモートワーク環境で例年のような対面での手厚いサポートが難しいこともあり、研修の進行に影響が出た。

 人事本部人事統括部人財開発担当の長谷川智亮課長は「自力での解決が難しい人もおり、(支援のため)1時間程度を取って全体の足並みを合わせる必要があった。そのため一部の研修時間を削らざるを得なかった」と振り返る。

 仮想OS演習環境を利用することで新入社員が自ら環境を構築する必要がなくなった。研修をスムーズに進めることができ、さらに1つの成果物を他の新入社員と複数人同時に編集しながら共同作成したり、講師がリモートで1on1(1対1)のサポートをしたりすることも可能になるというメリットがあった。

仮想OS演習環境を利用したNTTデータの研修の流れ。ブラウザーからアクセスできるためスムーズに研修に取り組むことができ、講師から1on1のサポートを受けることもできる
仮想OS演習環境を利用したNTTデータの研修の流れ。ブラウザーからアクセスできるためスムーズに研修に取り組むことができ、講師から1on1のサポートを受けることもできる
(出所:NTTデータ)
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