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 ビデオ会議やチャットツール、eラーニングなどオンラインで研修を受けるためのツールはそろいつつある。リモート・非対面で仕事ができることは便利で効率もいい。だが社会に出たばかりの新入社員には変化が激しく、知らずにかなりの負荷がかかっているだろう。ベストなコンディションで社会人生活のスタートを切ってもらうために、心身のケアが必要だ。

 2019年までは研修担当者が実際に同じ空間にいる新入社員へ目を配り、疲れているなど問題がありそうであれば直接声をかけることでケアしやすかった。だが新型コロナウイルス感染症の拡大で、職場環境は一変した。対面での接触が困難になる中、画面越しで圧縮された映像や音声、文字情報を通すだけでは彼らの機微を捉えることは難しい。

 コロナ禍で2度目の新年度を迎え、新入社員研修を進める上でどのような手が打てるのだろうか。20年に新型コロナ感染症を含む災害へのBCP(事業継続計画)を目的の1つとして兵庫県・淡路島への本社移転を決めたパソナグループと、いち早く全社テレワークに踏み切ったGMOインターネットの新入社員研修にそのヒントがあった。

淡路島へ移転のパソナ、オンライン診療で体調ケア

 パソナグループは20年9月から淡路島へ本社機能の移転を進める。21年はグループ会社の新入社員を含む162人が4月1~5日まで研修を、うち83人がそれ以降も長くて5月31日までOJTなどの研修を淡路島で受講する(職種により終了時期が異なる)。

 同社は研修をオフラインとオンラインのハイブリッドで進める。21年のオフライン研修の目玉には、元ラグビー日本代表の冨岡耕児氏を講師とし、ラグビーの試合を通してチームメーキングを学ぶ「ラグビー研修」がある。研修では5月21日と24日の2日間、同氏の指導の下、腰に付けた「タグ」を互いに取り合う「タグラグビー」で練習と試合を6回繰り返す。自身の役割を理解し、勝つためにチームで協力することで相互理解やコミュニケーションを深めるというものだ。

 知識習得はeラーニングを活用し、原則オンラインで進めていく。オンラインで気掛かりなのは対面で様子を伺うことができない新入社員の健康状態だ。

 パソナグループでは20年秋から福利厚生の一環としてオンライン診療を取り入れており、新入社員も受けられる。LINEで医師に予約を取り、ビデオ会議ツールのZoomやFaceTimeなどを使って遠隔で診察を受ける。

パソナグループ産業医の大日向玲紀氏。オンライン診療を担当する
パソナグループ産業医の大日向玲紀氏。オンライン診療を担当する
(出所:パソナグループ)
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 オンライン診療は医療機関の実証実験を兼ねている。淡路島にはもともと医療施設が少なく、大きな病院を受診したい場合、住む場所によっては高速道路を使って移動しなければいけない場合もあるという。淡路島勤務のパソナグループ社員にオンライン診療を提供することで、その有効性を確認するのが狙いだ。21年4月6日以降も淡路島で研修を受けた社員のうち、多くはそのまま淡路島に在住することになる。

 オンライン診療時のデータは薬局に送付され、病院で処方箋を受け取らなくても直接薬局で薬を受け取ることができる。21年4月時点で既に数人の新入社員がオンライン診療を利用しており「(感染の心配がある中で)病院に行かなくてもすぐに薬がもらえてよかった」などの声が上がっているという。

 パソナグループHR本部の芝陽子グループ人財開発部長は「対面での診療と比較し、不調がある場合早い段階でケアしてもらえるのは新入社員の安心感につながる」と話す。医療の面から手厚くケアし、ベストコンディションで研修に臨んでもらおうというわけだ。