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 デジタル技術を上手に活用して便利で快適な社会を築き、産官学が連携して国としての国際競争力を引き上げる――。世界中が新型コロナウイルス感染症拡大の危機に見舞われる中で、日本は今このような課題に直面している。目の前の危機にどう臨み、デジタル活用を推進していくべきか。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、その鍵は「AI(人工知能)活用」と「日本発のAIベンチャーの育成」にあるとみる。

ソフトバンクグループが2021年5月12日に開いた決算説明会で登壇した孫正義会長兼社長
ソフトバンクグループが2021年5月12日に開いた決算説明会で登壇した孫正義会長兼社長
(出所:ソフトバンクグループの決算説明会動画)
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 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡るシステム障害や感染確認アプリの不具合など、コロナ禍において社会分野におけるデジタル活用の後れが目立っている。こうした現状について、ソフトバンクグループが2021年5月12日に開いた決算説明会で質問したところ、孫氏は「FAXでPCR検査の結果を伝えるとか、何を考えているのか。恥ずかしくて話にもならない」と切り捨てた。

 情報共有などの仕組みを「デジタルにするのは当たり前の話。世界の最先端はAI革命で競争し合っている。デジタルトランスフォーメーションのさらにその次には、AIトランスフォーメーションがある」。孫氏はこのような見方を示したうえで、「(社会の仕組みが)デジタルになっていないのは、(デジタルトランスフォーメーションの)スタートラインにも並んでいないということ。日本の現状を大変憂いている」と続けた。

「我々が成功事例を示す」

 孫氏はかねて「日本はいつのまにか『AI後進国』になってしまった。手遅れではないかもしれないが、かなりやばい」と、日本の現状に危機感を示してきた。

 AIの得意技について、孫氏は「一言で表すとプレディクション(予測)だ」とみる。物事を推論する力は「人間の進化の源泉であり、推論に欠かせないのがデータだ」(同氏)。自動運転などが普及すればデータ量は爆発的に増える。「この先30年で人間が推論するには不可能に近い量のデータがやってくる。だからAIを使って推論をしていく必要が出てくる」(同氏)という論理だ。

 日本が「AI後進国」から脱却することはできるのか。「わたしは政治家でないし意思決定できる立場にない。我々が一民間企業として成功事例を示す。世界で徹底的にどんどんやりながら、日本でも(デジタル活用の)機運が高まるよう祈っている」と孫氏は述べた。

 ソフトバンクグループはAI活用のほか徹底したペーパーレスやテレワークの導入などで先行しており、このような取り組みをさらに加速させる方針だ。