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 産業界と官公庁、学術界の連携を意味する「産官学」に、市民の「民」と、金融の「金」の要素を加え、「産官学民金」でデジタル人材育成のプラットフォームをつくっていくべきだ――。日本経済新聞社と日経BPが2022年5月に共催した「デジタル立国ジャパン・フォーラム」において、地方都市の中小企業におけるデジタル人材育成に関わる4人が討論した。

 4人とは経済産業省の武尾伸隆商務情報政策局 情報技術利用促進課課長、iU(情報経営イノベーション専門職大学)の中村伊知哉学長、人工知能(AI)開発コンペの運営などを手掛けるIT企業、SIGNATEの齊藤秀社長CEO(最高経営責任者)、富士通の江尻昌紀グローバルカスタマーサクセスビジネスグループ Manufacturing事業本部 本部長代理だ。司会はデロイトトーマツコンサルティングの森修一パブリックセクター執行役員が務めた。

 デロイトの森執行役員は「都市への一極集中は今後も止まらず、地方との格差は今後も広がったままだろう。人材の質と量の伸び悩みも続くはずだ」との前提に立ち、「(地方で活動する)地域中小企業のうちDX(デジタル変革)に取り組んでいる企業は1割に満たない」と指摘。「ITやDXに関する技能を持つ若者が仕事を求めて都市部に移るという負のスパイラルに陥っている」と続けた。

デロイトトーマツコンサルティングの森修一パブリックセクター執行役員
デロイトトーマツコンサルティングの森修一パブリックセクター執行役員
(撮影:北山 宏一)
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 このような課題の解決に向けた論点として、森執行役員は「地域中小企業におけるDXの重要性」「地域や市場のニーズに合ったデジタル人材の増大」「地域のDXにおける『産官学民金』の連携推進に向けた提言」の3つを示した。

DXは地域中小企業のチャンスになり得る

 1つ目の「地域中小企業におけるDXの重要性」について、経産省の武尾課長は「DXは、単にデジタルやシステムを小手先で入れるだけでは成功しない。企業のビジネスモデルや文化を変えることが必要になる」と述べた。

経済産業省の武尾伸隆商務情報政策局 情報技術利用促進課課長
経済産業省の武尾伸隆商務情報政策局 情報技術利用促進課課長
(撮影:北山 宏一)
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 地域中小企業のDXが遅れている一方で、「実は地域中小企業こそ、DXはチャンスになり得る」(武尾課長)とした。中小企業は「経営者1人の判断によって新しい取り組みを進めやすい。DXやITによって今までアプローチできなかった層にもサービスを届けられる可能性がある」(同)。

 経産省は2022年4月に、「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」を発表している。「デジタルガバナンス・コード」は経産省が2020年に発表したもので、経営ビジョンの策定・公表など経営者に求められる対応を掲載しているが、「掲載内容など、大企業向けの部分があった」(武尾課長)。今回発表した手引きは、「より中堅・中小企業の方が参考にしやすいように作った」(同)。

ビジネス現場での実践が最も重要

 2点目の「地域や市場のニーズに合ったデジタル人材を増大させるには」というポイントについて、iUの中村学長は同校の取り組みを紹介した。

iU(情報経営イノベーション専門職大学)の中村伊知哉学長
iU(情報経営イノベーション専門職大学)の中村伊知哉学長
(撮影:北山 宏一)
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 中村学長はiUについて「デジタルを使ってイノベーションを起こす人材を育てている」と説明し、「授業ではICTとビジネスについて英語で教えているが、それだけではイノベーションを起こせる人材は育たない。実践の場を設け、企業と一緒に育てる学校を目指している」(中村学長)とした。

 ビジネスの現場との関わりを重視し、「30人ほどいる教員の8割が産業界出身で、客員教員も500人いる。連携している企業もIT中心に400社ある」(中村学長)。これらに加えて学生には、全員に4カ月のインターンシップと起業プログラムを経験させているという。