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 国や地方自治体など公共機関がDX(デジタル変革)を進め、成功事例を共有・横展開するためには何が必要か――。日本経済新聞社と日経BPが2022年5月に共催した「デジタル立国ジャパン・フォーラム」において、デジタル庁や自治体幹部といった公共DXを推進する「中の人」などが秘策や勘所について討論した。

 討論の進行役を務めた慶応義塾大学の村井純教授は、公共DXの置かれた現状と必要性について次のように問題提起した。「国がIT政策を作った2000年から約20年が経過した。当時は『公共主導で進めてきた他のインフラとは異なり、ITは民間主導で進めるべきだ』との強い思いがあった」。

慶応義塾大学の村井純教授
慶応義塾大学の村井純教授
(撮影:北山 宏一)
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 村井教授は「今、民間任せにしてきたことによる問題が非常に大きくなっている」と指摘。「日本のDXは大きく遅れているが、それを是正できる体制が行政側に整っていなかった」と続けた。

 ITインフラ整備を民任せにしてきた問題の一例として、データセンターや、光ファイバーケーブルの陸揚げ拠点が首都圏に集中する現状がある。特定の都市に集中したほうが作業などの効率が上がるため経済発展には有効だが、「一極集中には様々なリスクがある」(村井教授)。国全体に均質なサービスを展開する観点や、クラウドなどによる新サービスを全国展開する観点からも、最適とは言えない面がある。

 ITインフラ整備など民間が主導してきたことによる問題は「日本だけではなく、世界中で大きなテーマになっている」(村井教授)。そのような観点からも「DXに対する責任をもっと公共が果たすべきであるのは間違いない」(同)と述べ、公共機関の奮起を促した。

デジタル化と規制改革を一体で進める

 続いて公共機関のキーパーソンがそれぞれの取り組みを説明した。

 デジタル庁の津脇慈子企画官は2021年9月に設立した同庁の取り組みについて紹介した。「最初は600人でスタートし、現在は省庁出身者450人、民間出身者250人の計700人に拡大している」(津脇企画官)。

デジタル庁の津脇慈子企画官
デジタル庁の津脇慈子企画官
(撮影:北山 宏一)
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 デジタル庁は2021年12月に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定した。津脇企画官は重点計画の内容について、目指すべきデジタル社会の実現に向け「デジタル庁は司令塔として、地方公共団体や民間事業者と連携・協力しながら取り組みをけん引していく」と説明し、その際、「スケジュールとKPI(重要業績評価指標)を設定して、継続的にバージョンアップしていく」とした。

 内閣総理大臣を会長とするデジタル臨時行政調査会を通じて、規制と行政の一体改革にも取り組んでいるとした。津脇企画官は「ただ行政をデジタル化するだけでなく、規制も変えなくてはいけない。例えば、目視や対面が前提となっているものをピックアップし、オンラインで行えるようにするなどして、デジタル化と規制改革を進める」と語った。