全2063文字
PR

 デジタル活用によって、住民一人ひとりに適切なタイミングで最適なサービスを「出前型」で届けたい――。このような考え方に基づき、東京都千代田区がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めている。旗振り役は39歳の樋口高顕区長だ。

 樋口区長は日本経済新聞社と日経BPが2022年5月に共催した「デジタル立国ジャパン・フォーラム」に登壇し、千代田区によるデジタル活用の取り組みについて説明した。

千代田区の樋口高顕区長
千代田区の樋口高顕区長
(撮影:北山 宏一)
[画像のクリックで拡大表示]

 まず樋口区長は千代田区の現状について次のように述べた。「住民が少なく面積が小さい一方で、交通インフラは非常に充実している。区役所本庁のほかに出張所が6つもあり、人口に対して相対的に窓口が多い。こういった特徴から、行政サービスではリアルな対面を得意としてきた」。

 一方で、「これらの恵まれた条件が行政サービスのデジタル化を遅らせた側面は否定できない」(樋口区長)と続けた。「時間が無い方や身体の調子が悪い方、障害をお持ちの方など、窓口に来られない方には行政サービスを提供できていないし、サービスがあること自体に気づいていただけていないことも多い」(同)。

一人ひとりに出前型でサービスを届ける

 樋口区長はこれからの行政サービスの在り方について「一人ひとりに出前型でサービスを提供することが求められている。そのためにはデジタル化が必要だ。民間には少し前からその波が来ていたが、遅ればせながら区市町村にも同様の波が来たと感じている」と説明した。

 コロナ禍で移動が制限されたことも、千代田区がDXに取り組む必然性を高めたとする。「人が集中する都市部では、感染が急拡大した。地域コミュニティーも経済も大変なダメージを受けた中で、民間ではリモートワークやオンラインでのサービス提供が進んでいる。行政も今までの在り方を変えなくてはならない」(樋口区長)。

 千代田区独自の特徴として樋口区長は「過去10年で人口が2万人、40%増加している。また転勤などを理由に、5年間で住民の方の3~4割が入れ替わる」と明かした。「今後は一段と住民ニーズが多様化するはずだ。クオリティーの高いサービスをきめ細かく、安定的に提供するにはデジタル化が欠かせない」(樋口区長)。

 樋口区長と共にパネル討論に登壇したデロイトトーマツコンサルティングの出水裕輝パブリックセクターシニアマネジャーは、「デジタルに対する親和性も多様化している」と指摘した。自社サービスを頻繁に利用する上位顧客向けに資本や時間を集中投下すればよい民間企業と異なり、「行政はユーザーを絞り込むことができない。住民自身がリアルとデジタルから好きな方を選べるようにすることが欠かない」(出水シニアマネジャー)。

デロイトトーマツコンサルティングの出水裕輝パブリックセクターシニアマネジャー
デロイトトーマツコンサルティングの出水裕輝パブリックセクターシニアマネジャー
(撮影:北山 宏一)
[画像のクリックで拡大表示]