公共分野におけるデジタル変革を担う人材をどう育成し、活躍の場を設けていくべきか――。日本経済新聞社と日経BPがこのほど共催した「デジタル立国ジャパン・フォーラム」において、デジタル人材育成に携わるキーパーソンがパネル討論した。
キーパーソンとは参議院議員の片山さつき氏、iU(情報経営イノベーション専門職大学)の中村伊知哉学長、損害保険ジャパンの浦川伸一取締役専務執行役員 兼 SOMPOシステムズ取締役会長、経済産業省の和泉憲明商務情報政策局情報経済課アーキテクチャ戦略企画室長だ。司会はデロイト トーマツ コンサルティングの森修一執行役員/パブリックセクターリーダーが務め、2021年5月28日に討論した。
片山氏は自民党デジタル社会推進本部におけるデジタル人材育成・確保小委員会の委員長として、日本がデジタル人材不足の課題に直面していると指摘。解決に向け、今後5年間で175万人のデジタル人材を育成するとの目標を示した。
育成に向けて、「アーキテクト」「データサイエンティスト」「サイバーセキュリティスペシャリスト」「エンジニア」「オペレーター」の5職種について「政府として初めて、デジタル人材のジョブディスクリプションを定義した」(片山氏)という。それぞれの職種について大学や関係機関などと協力しながら育成を進めていく。
デジタル人材育成と並行して、国民や自治体職員のITリテラシー強化に向けた考えも明かした。片山氏は「現状では、高齢者にITを使った申し込み方法を聞かれても答えられない自治体の職員がいる。このような現状を変えたい。自治会、町内会、携帯ショップなどにおいて、基本的なITの質問に答えられる人材を育てる。先ほどのデジタル人材175万人とリテラシーを持った人材を合わせて500万人にしたい」と力を込めた。
学校と産業界がもっと連携すべき
iUの中村学長は「国の手続きがオンラインでできるのは7.5%しかなく、コロナ前にオンライン授業ができた学校は5%しかなかった」と述べ、公共分野におけるデジタル化の現状について危機感を示した。
一方で日本は「コロナ禍においても感染者や死者が少なく、ロックダウンもせずに乗り切れそうな状況だ。安全・安心な国だという評価を受けて、コロナが収まれば海外からも人が一気に戻ってくるように感じている」(中村学長)。そのため「そうなるまでの期間を、デジタル化の遅れを取り戻すチャンスに変えたい」(同)と続けた。
中村学長はデジタル人材の「層を早急に広げなくてはならない」とも述べた。「これまでDX人材といえばベンダーにいるIT専門家のイメージだったが、これからは全業種・職種がDX人材を求める」とした。
学長を務めるiUでは「全学生が企業に半年ほどインターンに行った上で、全員が起業する」(中村学長)という。開学してから1年で「約250の企業から一緒にやろうと声がかかった。産業界からニーズがあることを実感している。これからは学校と産業界が連携して人材育成に取り組む必要があると思う」(同)とした。