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 人口減少をはじめとする社会課題を解決するために、日本の地方自治体はデジタル技術をどう活用していくべきか――。日本経済新聞社と日経BPが2022年5月に共催した「デジタル立国ジャパン・フォーラム」において、群馬県前橋市のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に関わるキーパーソンが討論した。

 キーパーソンとは前橋市の山本龍市長、前橋市のアーキテクトを務める日本通信の福田尚久社長、セールスフォース・ジャパンの伊藤孝専務執行役員、デロイトトーマツグループの香野剛ガバメント&パブリックサービシーズインダストリーリーダーだ。

 岸田政権はデジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決する「デジタル田園都市国家構想」を掲げている。前橋市は、同市が以前から取り組んできたデジタル化の施策が国の掲げる方針に沿うとし、デジタル田園都市を目指して取り組みを進めている。

 前橋市のデジタル化の鍵を握るのが2022年10月に発行予定の「まえばしID」と、それを利用した「デジタル市民権」だ。まえばしIDとは、スマートフォン上で電子証明書を発行してIDとして使えるようにする取り組みを指す。「まえばしIDによって、本人確認や意思の確認ができれば、相手を信頼できるようになる。それによって多様な人をつなぐことが可能になり、デジタルが本来の力を発揮しやすくなる」(山本市長)。

前橋市の山本龍市長
前橋市の山本龍市長
(撮影:北山 宏一)
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住民票がない人にも政治に参画してもらう

 前橋市のアーキテクトを務める日本通信の福田社長はデジタル市民権について、「私のように前橋以外の場所に住民票があるが、前橋出身なので市の役に立ちたい、と考える人や、前橋以外の居住地から前橋へ働きに来ている人など、前橋に関わる全ての人に政治へ参画してもらうための仕組みだ」と説明する。

日本通信の福田尚久社長
日本通信の福田尚久社長
(撮影:北山 宏一)
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 デジタル市民権を持つ人の多様な意向を頻繁に確認し、それを新たな行政サービスの開発や、既存サービスのアップデートに生かしていくという。「企業はマーケティング活動によって製品やサービスをブラッシュアップするのが当たり前だが、行政はそれをしていない。前橋市ではデジタル市民権を活用し、まちづくりにおいてもマーケティング活動を実践しようと考えた」(福田社長)。サービス開発には、これまで市内外合わせて180を超える事業者が参画している。

 福田社長は前橋市による過去のDXの取り組みについて「法的規制がない範囲が中心だった」と振り返る。その理由は「規制がある中で使えるような、法律的な根拠を持って本人を確認できる仕組みがなかったためだ」(福田社長)。まえばしIDを作ることで、「利用者の同意が前提だが、スマホで安心・安全・便利に、規制の有る無しにかかわらずデータを活用できる。様々な分野でDXを加速できるようになる」(同)。