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 デジタル技術の活用によって、行政サービスはどんな進化を遂げられるのか――。日本経済新聞社と日経BPがこのほど共催した「デジタル立国ジャパン・フォーラム」において、4人のキーパーソンがパネル討論した。データ連携、リーダーシップ、トップの責務など、多様な観点から行政分野におけるデジタル化の課題と解決策を探った。

 4人とは冨安泰一郎内閣審議官(内閣官房IT総合戦略室長代理:副政府CIO)、三条市の滝沢亮市長、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の吉本和彦理事長、ITコーディネータ協会の澁谷裕以会長だ。司会は日経BP総合研究所の田中祐子コンサルティングユニット長が務めた。

 冨安審議官は「マイナンバーやマイナンバーカードなどデジタル社会の共通機能の整備・普及を図り、横串のデータ戦略をつくり、これらも踏まえて国・自治体、準公共のシステムの整備方針をユーザー(国民)の使いやすさも意識しながら考える」と述べ、利用者視点で使いやすく便利な行政システムを構築するためのポイントがマイナンバーとマイナンバーカードの活用にあるとの考えを示した。

冨安泰一郎内閣審議官(内閣官房IT総合戦略室長代理:副政府CIO)
冨安泰一郎内閣審議官(内閣官房IT総合戦略室長代理:副政府CIO)
(写真:陶山 勉)
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 マイナンバーカードを使って様々な行政の手続きや通知を確認するマイナポータルについても紹介した。「マイナンバーカードをキーにしていろいろなことができる。子育てをはじめとする自治体の行政手続きについて、サービス検索やオンライン申請をするための『ぴったりサービス』や、税や世帯などの自己情報が確認できる『あなたの情報(現在はわたしの情報)』、e-Taxやねんきんネットなど外部サイトと連携する『もっとつながる』などだ」(冨安審議官)。このようなサービスが増えれば行政サービスの利便性向上につながる。

 連携できる外部サイトについても拡充を図っている。「なるべく手書きや書類提出を無くし、データを一括取得し、自動入力できるようにしていく」(冨安審議官)。2021年は生命保険会社と連携し、新たに生命保険料の控除証明書への自動入力が可能になった。今後はふるさと納税について、業者と連携して自動入力できるようにする計画だ。

 冨安審議官は政府や自治体のデジタル活用力を高めるために必要な考え方として、次のように述べた。「国民の生活を良くすることが目的であり、デジタル活用は手段だ。デジタルを使うことでいかにより良いサービスを実現できるのかという視点で発想することが大切だ」。

職員とのやり取りをチャットに、電子契約も進める

 新潟県三条市はチャットツールや電子契約などのデジタル技術を積極的に活用している。滝沢市長は「従来は職員とのやり取りはメールや電話だったが、私が(2020年11月に)就任してからLINE WORKSを導入してやり取りするようにした」と話した。これによって情報共有が迅速にできるようになったという。

三条市の滝沢亮市長
三条市の滝沢亮市長
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 2021年4月には三条市が契約する事業者との間で電子契約を導入した。滝沢市長は「従来は契約書を印刷・押印して郵送でやり取りしていたが、これを電子メールとWebブラウザーの操作だけで終えられるようにした」と語った。

 職員の採用試験のオンライン化も進めた。「昨年(2020年)までは計4回、会場に来てもらう必要があった。今年(2021年)はオンライン化を進め、最後の市長面接のみを対面にした」(滝沢市長)。グループワークもオンライン上で行うという。この結果、受験者数は前の年から倍増し、青森県や鳥取県など遠方からの受験があったという。

 政府や自治体におけるデジタル改革の考え方として、滝沢市長は「次の世代のことを考えて取り組む覚悟が必要だ。今だけを考えると紙を使っていても頑張れば何とかやれるとなってしまう。そうではなくて次の世代がより楽に取り組めるように考える必要がある」と力を込めた。