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 「我々が目指すデジタル化は、ぬくもりを生み出すデジタル化だ」。河野太郎デジタル大臣は2022年12月1日、産官学連携による日本のデジタル活用促進について議論する「デジタル立国ジャパン2022Winter」に登壇し、このように強調した。

河野太郎デジタル大臣
河野太郎デジタル大臣
(写真:村田 和聡 配信映像を撮影)
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 デジタル庁は2021年の発足時からのミッションとして、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を掲げ、中央省庁や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めてきた。デジタル化は人を介したやり取りよりも「冷たい、非人間的と捉えられがちだが、我々が目指すものは違う」と河野大臣は続けた。

 例えば行政における不要な手続きをデジタル活用によって減らすことで、業務に余裕ができる。結果として「高齢者や障害者に寄り添うなど、人間が本来すべきことに集中できるようになる。こうしたこと(デジタル活用)が、ぬくもりのある社会の実現につながる」(河野大臣)。人々に優しいデジタル化という大方針こそが、公共DXには不可欠であるとの見方を改めて示した。

 河野大臣は、マイナンバーカードの活用など全国の自治体によるデジタル化の具体例を紹介したうえで、「政府として各地の先進事例を日本中に横展開していく」と意欲を見せた。「業種、分野を超え、ともに力を合わせて、日本のデジタル化を前に進めていきましょう」と呼びかけた。

人口減の社会はデジタル活用が必須

 河野大臣に続いて登壇したデジタル庁の村上敬亮統括官は、人口減に直面する日本においては特にデジタル活用が欠かせないとの見通しを示した。

デジタル庁の村上敬亮統括官
デジタル庁の村上敬亮統括官
(写真:村田 和聡)
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 歴史を振り返ると日本の人口は生産性の向上に伴って増えてきた。だが「2008年をピークに減り始め、(今から78年後の)西暦2100年には6000万人を切ると予想されている。人口減によって起こるのが、供給が需要に合わせる社会」(村上統括官)の到来だという。

 従来の人口増加局面では、需要が供給に合わせる形で各種のサービスが存在していた。例えば「乗客(需要)が時刻表に合わせてバス停に来て、バス(供給)を待つ」「雇用先(供給)の就業ルールに従業員(需要)が従う」といった具合だ。

 人口減の局面になると需給の立場が逆転する。「乗客の都合(需要)に合わせて迎えの車(供給)が家の前に来たり、従業員の働き方や暮らし(需要)に雇用先が就業ルール(供給)を合わせたり、といった社会になる」(村上統括官)。

 人口減により需要は減りつつ、その内容は多様化していく。一方で供給も増えることはない。このような「需給ギャップを解消するには、供給側が効率化するしかない。必然的にデジタルを活用することになる」(村上統括官)。

デジタル化の課題は、基盤整備と人集め

 行政組織における現状のデジタル化について、村上統括官は2つの課題を提示した。1つはデータ連携基盤の整備だ。

 「例えば個人の健康情報を取得する優れたスマートデバイスなどは既に存在するのに、そのデータを受け渡すフォーマットや、それらを受け入れる病院側のシステムなどが整っていない」と指摘。データ連携基盤がないことが、健康医療分野のデジタル活用の妨げになっている現実について説明した。

 データ連携基盤の整備がなかなか進まないのは、「その費用を誰が負担するのかという問題がある」(村上統括官)からだ。民間企業が1社で構築しようとすると「投資を回収できない」(同)という。官民などの「共助という形で、皆でやるしかないのは分かり切っている。誰が仕切るかを含めて決めていく必要がある」と続けた。

 もう1つの課題は、地域に人を呼び込むことだ。「デジタル化の担い手になる多様な人材、特に若手を地域に呼び込むことが必要だ」と村上統括官は指摘した。「自分の力を試してみたいと考えている若手はたくさんいる。彼らに適切な出番と居場所を与えるようにできれば、必要な人材を集められるはずだ」(村上統括官)。

 人を集める際には、いきなり地方都市への移住を求めるのではなく、「まず月1回来てもらうことからスタートし、それを週1回、週2回といった具合になだらかに増やし、最終的に移住につながるような形に設計すべきだ」と述べた。