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日経コンピュータの書籍『なぜデジタル政府は失敗し続けるのか 消えた年金からコロナ対策まで』より、デジタル政府20年の歴史を解説した第3章の一部を再録しました。本記事は第8回です。

長官をトップとする推進体制

 過去プロジェクトと異なる最後の特徴は、特許庁内のプロジェクト推進体制である。

 特許庁はプロジェクト再開に当たり、特許庁長官を本部長、特許庁CIO(特許技監)を本部長代理とする「特許庁情報化推進本部」を設置した。同本部が、情報システムの設計に当たって経営判断レベルの意思決定を担うほか、必要な予算・人員の確保、プロジェクトへの進捗報告評価といった機能を持つ。

 実際のプロジェクト管理は特許庁PMOが担う。情報システム室、総務課、外部の専門家などで構成する。今回はサブシステムごとにITベンダーに設計・製造を委託するため、これら複数のプロジェクトを取りまとめる役割を担う。特許庁PMOは、個別プロジェクトの進捗について、特許庁CIOに週1回、特許庁長官には月1回の頻度で報告する。プロジェクトの開始以来、2021年現在までこの体制が続いている。

 過去のプロジェクトでは別のITベンダーに委託していたベンダー管理業務は、今回は特許庁自らの手で担当する。各サブシステムの開発に参加する複数のITベンダーをとりまとめ、それらのサブシステムを接続、統合する作業を、特許庁の責任で実施する。

 過去のプロジェクトでは、約100人を擁する情報システム室のうち、刷新に参加していたのは20人ほど、多い時期でも40人ほど。残りの職員は現行システムの運用に専念しており、両チーム間のやり取りは少なかった。このため、現行システムの知見をシステム刷新に生かせなかった。今回のプロジェクトでは、新システムと現行システムとが混在することから、情報システム室職員の大半は何らかの形でシステム刷新に関わることになる。

 特許庁が身の丈を超えた計画に走らないよう、外部委員会「特許庁情報システムに関する技術検討委員会」が引き続き、プロジェクトの進捗を監査する。

 2020年末時点で、開発は当初予定より遅延しつつも着実に進行している。特実審査業務システムは既存ベンダーのNTTデータが受注し、2021年7月をメドに稼働を目指す。公報システムは日立製作所が受注し、2022年1月に稼働させる。いずれも同一のBPMツールを活用し、最適化した業務プロセスをBPMNの形で組み込む。「審判システム」は調達手続き中で、2024年1月に稼働させる予定だ。最後に「意商システム」を稼働させれば、システム全体の刷新が完了する。