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日経コンピュータの書籍『なぜデジタル政府は失敗し続けるのか 消えた年金からコロナ対策まで』より、デジタル政府20年の歴史を解説した第4章の一部を再録しました。本記事は第9回です。

 これまで詳しく取り上げた特許庁システムと並び、開発が迷走した大規模システムがもう1つある。国民の老後の貴重な生活原資となる「年金」のデータを長期にわたり管理する社会保険オンラインシステム、いわゆる「年金システム」である。

 年金システムは主に2つのシステムからなる。被保険者の保険料納付記録を管理する「記録管理システム」と、受給権者の記録管理や年金額の計算、支払いを担う「年金給付システム」である。現行の年金給付システムは1964年度(昭和39年度)に、記録管理システムは1984年度(昭和59年度)にそれぞれ稼働した。このほか、基礎年金番号を導入した1997年に「基礎年金番号管理システム」を稼働させた。

 年金システムの主要ベンダーはNTTデータと日立製作所である。厚生労働省は2018年度に同システムの年間運用経費としてNTTデータに108億円、日立製作所に206億円を支払っている。政府システムの中でも特許庁システムと並ぶ巨大システムだ。

 この年金システムも「業務・システム最適化計画」に基づくレガシーシステム刷新の対象となり、同システムをオープン化するプロジェクトが2006年に始まった。5年後の2011年の稼働を目指した。

 特許庁システムと同じく複数ベンダーへの分割発注を基本方針とした同プロジェクトで、厚労省は基盤ソフトの基本設計と全体工程管理をアクセンチュアに、適用・徴収・給付など業務アプリケーションの基本設計をNTTデータ、日立製作所、沖電気工業に分割発注した。だが、本来は密接に連携しているシステムを分割して発注したため、連携や共通機能の設計は難航した。