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プロジェクトの契約解除も難航

 開発失敗に終わった同プロジェクトは、契約の解除を巡る交渉も難航した。

 政府が契約を解除するには、成果物の対価から違約金まで、金銭の支払いで合意する必要がある。関係者によれば、特許庁を所管する経済産業省と開発ベンダーの間で、2012年前半の段階でこの合意がほぼできていた。だが2012年12月に政権が民主党から自由民主党に交代した後、政府の閣僚から「開発ベンダーに適正な違約金を求めるべきでは」と注文がつき、交渉の行方が見えなくなった。

 この契約解除を巡る交渉は2013年、意外な結末をたどる。東芝ソリューションとアクセンチュアが契約解除に際し、特許庁システムの開発費に利子を加えた約56億円を同庁に返納したのだ。同年8月に合意が成立、同年9月に返納金として両社から約56億円が支払われた。同システムの開発では、特許庁は東芝ソリューションに対し、2009年度までの4年間で約24億8700万円を、アクセンチュアには2011年度までに約29億6400万円、計54億5100万円を支払っている。つまり、両社は受け取った開発費全額を、利子付きで特許庁に返納したことになる。

 ある特許庁職員は、今回の返納金を「係争自体、なかったことにするための解決金」と解説する。

 開発失敗の責任をめぐって法廷での争いに発展すれば、特許庁、ITベンダーともに多大なマンパワーが割かれる。ITベンダーにとっては、司法で認定された瑕疵(かし)によっては、追加の行政処分が下る可能性もある。特許庁は今回の「和解」で、会計検査院に不当な支払いと認定された支出金をそのまま取り戻すことができる。一方でITベンダー2社は、新たな処分などで今後の政府入札に支障を来すリスクを取らずに済む、という構図だ。一方で、開発失敗を巡る政府側の責任はうやむやになった。

 (第3回に続く)