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 1999年に英国の技術者であるケビン・アシュトン氏が、ユビキタスセンサーを通してインターネットが物理世界をつなぐシステムを「Internet of Things(IoT)」と名付けたと言われているが、それから早20年超が経過した。当初はRFID(Radio Frequency Identification)が主な「Things(接続デバイス)」であったが、21年現在では、スマートフォンや家電をはじめ、ありとあらゆるものが「Things」となり、自動車もその例外ではなく、コネクテッドされる「Things」となった。

 国内においては、「インターネット・オブ・シングスの実現」を「インターネットに多様かつ多数の物が接続され、及びそれらの物から送信され、またはそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民生活及び経済活動の基盤となる社会の実現」と説明している(16年4月27日改正 特定通信・放送開発事業実施円滑化法付則)。

 もう少し具体的なイメージを表すと、「インターネットにつながった多種多様多数のデバイスから得たデジタルデータを用いてサイバー空間上に現実社会のコピー環境を構築する(デジタルツインの概念)。そのコピー環境上で目的に応じたデータ利活用(シミュレーションなど)を行うことにより、目的に資する演算を行う」といったところか。

 IoTの仕組みは一般的なデジタルデータ利活用だが、世間はなぜこのIoTをそこまで大げさに取り上げるのか?

 インターネットの発展は情報伝達手段の発展の1つと言える。人間はこれまで情報伝達手段を郵便、電話、電子メール等々と進化させてきた。これまではヒトとヒトとの情報伝達が主であったが、デジタルテクノロジーの進歩がヒトとモノの情報伝達をリアルタイムに可能にするという違うステージに昇華させた。これこそがIoTの神髄と言えるであろう。これはまさしくデジタルトランスフォーメーション(DX)であり、コネクテッドを単なる「つなげる技術」と捉えてはいけない。

 この現象は100年に1度の大変革を迎える自動車業界も例外なく影響を受け、今後対峙しなければならない重要テーマの1つでもあり、事実各社は様々な角度から対応の検討をしている。

 CASEの一要素でもある「コネクテッド」は自動車業界にどのような影響を及ぼすのか?コネクテッドとは単なる車両の一機能なのか?その解を出す上でも、車両のコネクテッド化による影響をひもとき、コネクテッドに関する対応方法を検討する必要がある(図1)。

(出所:デロイト トーマツ コンサルティング)
(出所:デロイト トーマツ コンサルティング)
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