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コネクテッドに対する構え

 様々な機器がネットワーク化された現在、人々はスマホがネットワークにつながっていない状態が考えられないように、近い将来車両がネットワークから切り離されている状態が考えられなくなるであろう。車両のコネクテッド化は当たり前と考えられ、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)のような安全機能などと同様に車両の標準装備になると推察される。

 コネクテッドは単なる車両の一機能としてだけでなく、新価値創造に不可欠となる重要要素の1つと認識し、製品単体だけでなくサービスも含めたより鳥瞰(ちょうかん)的なユーザー視点で捉える必要がある。

 確かにコネクテッドサービス単体ではもうからないという声も多く聞くが、今後避けて通れないコネクテッドとはうまく付き合う必要がある。コネクテッドを単につながる機能と捉えるのか、新価値創造の可能性を秘めたデータ利活用機能として捉えるのか、捉え方次第でコネクテッドは両刃の剣と化す。収益に関しても、手段としてのコネクテッドを単体ではなく提供価値全体で捉えることが重要となる(図5)。

(出所:デロイト トーマツ コンサルティング)
(出所:デロイト トーマツ コンサルティング)
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 また、地理・物理的制約がないコネクテッドの世界では、自動車業界は従来の競合だけでなく他産業という新たなプレーヤーと対峙することになる。車両がネットワークにつながるデバイスの1つと見なされた瞬間、他産業のプレーヤーたちは車両というネットワークデバイスが持つビジネスの可能性を彼らが得意とする領域にいかに有利に引き込むかを虎視眈々(たんたん)と狙っている。

 加えてコネクテッドビジネスの主戦場となるのはこれまで自動車業界がほぼ経験したことのないサイバー空間となる。この領域は「GAFA」や「BATH」を代表とするいわゆるデジタル企業のお家芸でもある。彼らの多くは既にプラットフォーマーという立場で様々なコネクテッドビジネスを展開しており、自社優位にユーザーを引き込むサービス展開も行っている。

 このようなプレーヤーと競合するのか協調するのかは各社の方針次第だが、自動車業界がコネクテッドの世界で生き残るためには、少なくとも自動車業界が現実世界で長年培ったモビリティーに関わるノウハウは、自動車業界内の協調も含め、可能な限りデジタルデータとしても押さえる必要がある。コネクテッドの世界で他産業などに後れを取らないためにも、モビリティーを中心にそれ以外の生活機能をいかに自動車業界優位に連携するかが、他産業などとのエコシステム形成を優位に進める上でも重要となるであろう。

 コネクテッドの世界は現実世界とサイバー空間が共存するがゆえに、デジタル企業が短期間で一方的に世界を席巻することは難しい。スマホと違って自動車は走る・曲がる・止まるという基本動作が安全かつ安心に行われることが絶対である。自動車業界が現実世界でこれまで培ったものづくりの技術は、使い方次第でサイバー空間でも絶対的優位なものとなり得る。とは言え、現実世界にばかり固執すると足をすくわれることになるため、コネクテッドは、新たな事業機会や技術革新、さらには社会課題の解決をもたらす手段と捉え、うまく付き合っていくべきである(図6)。

(出所:デロイト トーマツ コンサルティング)
(出所:デロイト トーマツ コンサルティング)
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 次回は、今回深く触れられなかったユーザー視点による新たなサービス創造(新たな提供価値創造)について紹介する。