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 新技術が次々と登場するIT業界。ソフトウエア開発者として10年後も活躍するためには、必要なノウハウやスキルをどのように見極め、身につければよいのか。長きにわたって活躍しているIT技術者に自らの経験を明かしてもらった。

 今回は、大手電機メーカーでパソコンの製造、ソフトハウスでプログラマーを経験した後、独立してパッケージソフトの開発・販売に従事する矢沢久雄氏に聞いた。同氏は『プログラムはなぜ動くのか』(日経BP)をはじめとする本の執筆やプログラミングに関する講演活動も積極的に行っている。

(聞き手は田島 篤=日経BP コンシューマーメディアユニット)

ヤザワ 代表取締役社長の矢沢久雄氏
ヤザワ 代表取締役社長の矢沢久雄氏
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移り変わりの激しいIT業界の各種技術にどのように接してこられたかを教えてください。

 新しい技術を特に意識したことはないですね。自分が興味を持ったからやる、というよりは、仕事の依頼として「こういうことをできないか?」と問われたからやる、という感じです。

 もともと受託システムの開発を手掛けていました。なので、業界ではやっているというだけではなくて、実際に仕事として依頼があったから取り組むというかたちです。

基礎の延長線上にある限り、何がきても大丈夫

どのような技術が必要になるかは、受託開発を請け負うときの判断基準にはなりませんか。

 受託開発では、技術よりも業種で判断してきたように思います。その業種に関する知識があったうえで、既存の、あるいは、比較的枯れた技術を用いて業務システムをきちんと開発する。私の仕事は新しい技術を開発することではありません。そのため、プログラミングの基礎知識を生かしやすかったといえるかもしれません。

 このやり方が通用してきたのも、システム開発の根底となる基礎の部分が大きく変わっていないからでしょう。ハードウエアとソフトウエアの基本的な仕組みや動作原理は変わっていないですからね。基礎の延長線上にある限り、「何がきても大丈夫」という気持ちはあります。

ただ、コンピューターやOS、アプリの基本的な仕組みは変わっていなくても、新技術は次々と出てきますよね。

 もちろん、新技術や新製品は相次いで登場します。でも、それらの多くはアプリケーションレベルの変化、応用であって、根底のプログラムが動くところまでいくと、画期的な変化は起きていないと思います。

 例えば、IoT(インターネット・オブ・シングズ)が2015年くらいからはやっていますね。私はIoT分野を手掛けていないこともあって、外から見ている限り、「派手に進化しているのだろう」と思っていました。ただ、IoTを扱う仲間の技術者に聞いてみると、「従来の技術と変わらないよ」と言うんですね。

 そこで、IoT関連のプログラムの中身を見ていくと、確かに従来と同様。では、IoTの仕事がきたら自分もやってみようかな、と思いますよね。もちろん、センサーや通信機能など、新規の技術や応用技術はあります。でも、それらも既存技術・知識の延長線上にある。実用化されて身近になった、というだけです。